ホーム > 不明 > MELODY > 愛すべき娘たち

8点(レビュー数:3人)

作者よしながふみ

巻数1巻 (完結)

連載誌MELODY:2002年~ / 白泉社

更新時刻 2010-07-05 23:12:50

あらすじ 女は謎。その愛はもっと謎。

ある日突然、受け入れる。
ある時いきなり全て赦す。
オトコには解らない、故に愛しい女達の物語が5本。

シェア
Check

この漫画のレビュー

9点 booさん

よしながふみの「愛すべき娘たち」を描くオムニバス短編集。

よしながふみの作品でも1番大好きなのがこれ。文句なしの傑作。

彼女の作品は常にジェンダーへの意識が感じられるとはよく言われることだ。それは確かに正しいのだけど、それだけではなく彼女は人間を型にはめるのが嫌いなのだと思う。
第1話冒頭、雪子の母親は「親だって人間だもの!不機嫌な時だってあるわよ。あんたの周囲がすべてあんたにとってフェアでいてくれると思ったら大間違いです」なんて一見とんでもないことを言う。
でもそれは真理だ。男だから、女だから…と同じくらい母親だから、お兄ちゃんだから…というのは固定的な通念で、だからこそ自分の生き方を自由に決めるためには考えるべきことなんだ、そんなよしながふみの姿勢を私はすごく尊敬している。

これは程度の差はあれどよしながふみ作品全ての根底に流れているもの(と私が勝手に思っている)で、特別愛すべき娘たちを好きな理由にはならないかもしれない。
この作品は、いつものよしなが作品と同様に何気ない会話や仕草が非常におもしろい。元ホストの青年をいくら誠実だといっても納得させるのは難しい。それをこの人はお茶を入れる仕草だけで表してしまうのだから脱帽だ。

ただ、愛すべき娘たちの秀逸な点はやはりその目の付け所、視点のおもしろさじゃないだろうか。
そんなに捻りのない話でも、よしながふみの見方はとても独特で常に新しい切り口のように感じられる。構成もとても上手い。

全体的に質は高いが、中でも飛びぬけているのは第3話と第4話。特に4話は今まで私が読んだ短編の中でも相当なもの。
3話は「分け隔てない愛」の話。優しく慈しむような愛と強烈な皮肉が相まってとんでもない怪作に仕上がっている。残るのは納得と一抹の寂しさ。
4話は「理想や夢の変質とそれを守る難しさ」という斬新なテーマをを残酷なほど丁寧に描いている。これで良かったのだという思いとそこまで割り切れない思い。そしてささやかな夢を叶えた友人。こういうのがあるから漫画を読むのは楽しい。

長々ととりとめもない文章になってしまったけど、大好きな作品なのでついつい色々と書き連ねてしまった。
よしながふみの「姿勢」と「思い」が詰まった傑作短編集。かなり気に入っているのでぜひ読んで欲しい作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-14 01:41:34] [修正:2011-09-14 01:44:20]

愛すべき娘たちと同じ作者の漫画

よしながふみの情報をもっと見る

同年代の漫画

MELODYの情報をもっと見る