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ブッダ
作者:手塚治虫

雑誌:月刊コミックトム

 レビュー全文  

2点  :霧立さん 

本編と同様、鹿に例えてみるが、生き物の世界に「無駄な殺生」などありはしない。
人が戯れに鹿を射ったとて、その亡骸は飢えたハゲワシやカラス、ハエや蟻たちの命を繋ぐかもしれない。
打ち捨てられた皮や骨はやがて分解され、大地の恵みとなるだろう。
その鹿が死んだことで食べられずに済んだ植物は新たな命を繋ぐ事ができよう。その植物がまた別の鹿や馬、昆虫の命を養うかもしれない。
そもそも捕食以外の殺生を行うのは人に限った話ではないし、食べるためでなくともその殺生は必ず他の命に影響を及ぼし、結果として他の生物の利となったり不利となったりする。ただそれだけの話であり、そこに善悪という判断基準が介入する余地はない。
また、生物が自らだけでなく、他の生物の事を考えるべきと言うのも解らない。全ての生物は自分達が生き残る事のみを最大の目標として他の生物と争い、捕食し、利用し、共生して来たからこそ進化や多様性を育んできたと言うのに。全ての生物が真摯な「生きるという欲望」のぶつかり合いしてきたからこそ、この星の生命の豊穣を生み出してきたと言うのに。各々の生き物が他者の生存や繁栄に想いをめぐらせたのなら、そこにあるのは安定という名の停滞であり、続く未来は進化が止まった末の破滅でしかない。

この作品は人間世界でしかありえない善悪という概念を生物全体に当てはめて物語を構築している。それが仏教の本質かどうかは分からないが、ともあれそれ故に私はこの作品を支持しない。

[ 2015-01-09 15:53:34]
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