大日本天狗党絵詞
作者:黒田硫黄
雑誌:月刊アフタヌーン
レビュー全文
9点
:■■■さん
最初に主人公とその師匠が「天狗」だということがわかるシーンですごい引き込まれますね。
この漫画を一言で説明するのはちょっと難しいですね。ちょっと文学っぽい描写も入ってますし。
よくわからないと言う人もきっといるでしょう。それはキャラクターの性格がちょっと複雑で、その心情を文字で表現してないからなんですけどね。その時に何を思っているかをちゃんと絵から読みとらないと作品に置いていかれてしまうんです。
でも基本的なルールはシンプルなんです。舞台は普通の日常なんですけど、ひとつ変わっているところがあって、「天狗」の存在を知った際に、世界に自分の居場所がないと感じているとその人も「天狗」になってしまうんです。
つまりこの作品は孤独感や存在する理由を「天狗」に例えて表現しているんです。
僕がこの作品を好きなのは、主人公のシノブと師匠が辿り着く答えが、結果的に全然違うものになったことなんです。
この二人は話の途中ですれ違って決別してしまうんですけど、もしも二人の答えが同じだったらもっと点数は低かったはずですし、ひどく安っぽいB級漫画で片付けられてもおかしくないでしょう。この作品がそうならなかったのは、いかにも漫画的なことをしながら、出てくる人間を深く掘り下げた奥行きがあるからだと思います。
僕は哀しさと力強さを感じる師匠とシノブの最後のやりとりが大好きなんです。
僕にとって『大日本天狗党絵詞』はおもしろくて勇気をくれる漫画なんです。
このレビューを書いていて改めて気付いたことがあります。それはこの作品のキャラクターの表情、特に目の表現力が非常に素晴らしいということです。
セリフがなくても伝わる、いや、言葉にしづらい感情を見事に捕らえているんです。
そのことに気付いてからは、この作品はシノブの表情が変わってゆく過程をを描いた物語なのかもしれないなと思っています。
[ 2006-11-09 22:45:54]
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