BABEL
作者:重松成美
雑誌:月刊IKKI
レビュー全文
6点
:booさん
全ての情報がビブリオテックという電子図書館に集積・循環される近未来。ビブリオテックは人々の知的創造の場としてなくてはならぬ場であった。しかし、ビブリオテックの電子図書にはパランセプトという原因不明の不具合が表れる。
主人公・オレッセンはビブリオテックの修復に従事するようになり、かつて父親の“消失”に関わった一つの書物の謎に迫っていくことになって…。
かつて人々は同じ一つの言語を話していた。人々がバベルの塔という天まで届く塔を建て、神に挑戦しようとしたことが原因で、神は人々に違う言葉を話させるようにした。というのがバベルの塔の大体のあらすじ。
想像するに、“かつてバラバラになった宇宙の全ての断片(情報)をビブリオテックに集めてしまえば、再び一つであったもの(アカシックレコード?)を復元できるのではないか? それは神へと至る道なのではないか? しかしそれではもう一度神の怒りに触れることにならないか?”…そんな期待と逡巡に満ちた人々のまなざしがこのBABELというタイトルからは感じられる。
私達は莫大なメッセージを送り続ける一方で、伝えられなかった思いは何処へ行くのだろう。記録されなかった情報の行方は?
まだまだ1巻は多くの示唆に満ちたプロローグに過ぎないのだけれども、圧倒的におもしろそうな匂いがぷんぷんしているわけで。新しくてなおかつ独創的。SF好きはもちろん、本好きをも惹き付ける神話と現代を上手く融合させた非常に魅力的なストーリーになる予感。
独創的とは言っても奇想を狙っているのではなくて、重松成美には物語りたくてしょうがないものがあるんだろうと思う。前作は「製本」の物語だったのだけれど、製本から一転して近未来の電子図書を扱うこのBABELにも変わらない気持ちが感じられる。本を読むこと・読み解くことへの強い思い、本に込める心、紙の本への郷愁を。
テーマや舞台設定からはサイバーパンク寄りになるのかなと思っていたら、ファンタジーの色が強いのには正直面食らった。現実の延長戦上の世界観が強いだけに。
少しデッサン調で精緻な絵柄なのでファンタジーとの相性も良さそうなのだけれど、この期待感と言うのは紛れもないSFのものなわけで。でも神話とSFを結びつけるのにはかなりの脚本の力が必要とされるだろうなぁとも思うわけで。理論立てたSFになるのか、肌で感じるファンタジーになるのかは分からないけれど、そこらへんの折り合いをどのようにつけていくのかもこれからの楽しみな所。
と色々書いたけれど、まだ期待感が先行しているというのが正直な所で。でも1巻でここまで期待させてしまえるというのはやはり物語りたいことのある人の強さだよなぁ。後はそれがどんな脚本で、どんな語り口で語られるのか…。イティハーサのように新たな神話が作られるんじゃないかと最高にわくわくしています。
[ 2012-05-31 12:17:49]
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