ぼくんち
作者:西原理恵子
雑誌:ビッグコミックスピリッツ
レビュー全文
10点
:白い犬さん
日本は比較的格差の少ない国とはいわれてるけれどれっきとした格差は存在するわけで、「ぼくんち」に出てくる世界はその最下層にいる人物たちだろう。その町で盗んだり盗まれたりだましたりだまされたりぼこぼこにしたりぼこぼこにされたり体売ったりシャブ打ったり…そんな底辺でも、底辺だからこそ見つけられる愛があるのだ。
私も愛なんて使い方によっては陳腐でうそ臭い言葉はできる限り使いたくないが「ぼくんち」に根底にあるものは間違いなく愛なのだ。
それとこの漫画は西原理恵子が意識しているかどうかわからないがフェミニズム的な見方からすると相当核心をつく言葉があったりする。妊娠したこういちくんのお姉ちゃんにこういちくんのママが「生んでも生まなくてもママはどっちでも味方。」とか猫のように子供を生んで捨てまくるばあさんが「世界中の女が子供を産めるけど世界中の女が母親ができるかというとそうでもない」とか、町で一番のワルなのにこういちくんがシャブ用注射器を女と子供に売らない理由を「子供はいいとして女にはなぜ?」と一太がたずねると「女はやらせてくれるし僕らを生んでくれるから」という一見馬鹿っぽいがものすごい含蓄ある言葉が出てきたりする。一話2ページなのにそれをテーマに30ページは描けそうな内容が詰まっている。そして私はラブコメに出てくるやたら理想化された天使のような女が大嫌いなのだが「ぼくんち」の一太二太のお姉ちゃん、かのこは菩薩のような女だなあ、とあれほど嫌悪していた女の神格化なのにあっさり受け入れられた。
とにかく、この漫画を一言でまとめるとゴミ溜めのような町でゴミのような生活をしている人々の日常の話を笑いながら泣きながら愛をみつけることができる、そんな漫画です。
[ 2006-02-12 19:21:30]
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