「クラさん」さんのページ
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9点 漂流教室
「楳図かずお」(敬称略)の代表作である事は、間違いないだろう。「14歳」「私は慎吾」「神の左手悪魔の右手」も、読みたいと思っているが、まだ読んでいない。
今から9年前の小学館文庫になってから、全6巻一気読みした。一巻目から読み始めると、最後まで読みたくなっててしまう漫画。まるでスナック菓子(=食べ始めたら止まらない。)のようだった。
楳図かずおは、翔と母親のケンカをしたまま学校に行く場面を最初(一巻冒頭)に入れたのはなぜか。巻を読むにつれ、翔の母親(=高松恵美子)の常軌を逸した行動や、息子(=翔)に対する異常な愛情はなんなんだろうと思う。「母親だから。」という理由だけでは、ない気がする。
一巻目から度肝を抜く展開。主人公の少年・高松翔の通う小学校が、校舎ごと荒廃した未来世界に飛ばされる。過去ではなく未来。それも、超高層ビルが立ち並び、空飛ぶ車が走るような夢のような輝かしい未来ではない。(楳図かずおは、近未来の地球を案じている気さえして寒気がするほどだ。)
大地は荒れ果て食料も水も何も無い。それどころか未知の人間、異様な生物との戦い。飢餓、流行病など、これでもかと無理難題が襲ってくる。子供達は、それにどう立ち向かっていくのか、生き残るための戦争が始まる。生きるために殺しあうのか、助け合うのか、憎みあうのか、協力しあうのか、いろんなことが、この漫画から感じる事が出来る。
初期の段階で教師達は狂って皆死んでしまう。「大人達」より「子供達」(小学校6年生)を、主眼(あるいは主観)として物語を作り出していったのは、それこそ今の子供達に読んで欲しい、「生きろ!」という楳図かずおのメッセージかもしれない。
「たとえだれもが信じなくても、、、翔は未来でりっぱに生きている!ここにいなくても、未来にちゃんといる!」という母親の言葉に、単にハッピーエンド(=子供達が、未来から現代に戻り、両親と再会する事。)にせず、希望を持たせた(最終巻の)終わり方もいい。
当時よく少年誌で連載できたと思う。今、少年、少女誌で連載するのは、どぎつ過ぎて無理だろう。
何も起きない平和な日本、衣食住に満ち足りた何不自由ない日本。ストリートチルドレンさえ街にいるわけでもない。「生きるか、死ぬか」という極限状態におかれた時、人間は、どういう行動にでるのだろうか。この作品の子供達を自分に置き換えてみて、自分だけ助かろうとするのか、人を殺してまで生きようとするのか。
この漫画を読んで、ふと頭をよぎった
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[投稿:2008-06-03 16:40:36] [修正:2008-06-03 16:40:36] [このレビューのURL]