「PIROPIRO」さんのページ

総レビュー数: 2レビュー(全て表示) 最終投稿: 2014年06月17日

約30年前、自分の金で買った初めての少女漫画。
「キラキラ瞳」「背景に咲き乱れる花々」といった、
当時の私の少女漫画に対する先入観を根底からひっくり返してくれた人物…
それが本シリーズのW主人公の片割れ、ドイツ軍人エーベルバッハ少佐でした。

当初、イギリスの耽美的な泥棒貴族(ホモなんですよ!)「エロイカ」こと
ドリアン・レッド・グローリア伯爵が主役を張っていた頃の本作は、
「いかにも」な少女漫画でした。
それが、ライバルとして登場したドイツ軍人、エーベルバッハ少佐の出番が
拡大していくに従って、「国際謀略・犯罪・コミカルハードアクション」というべき
画期的ジャンルを開拓していったのです。

ドイツ軍人にしてNATO(北大西洋条約機構)情報部将校の
クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐は、ソ連KGBなど、東側の組織から
「鉄のクラウス」と恐れられる凄腕スパイであり(まだ当時は東西冷戦の時代)
その強面で周囲をビビらせ、言い寄る美女には見向きもせず、
叡智と腕力の限りを尽くして目的を遂げる任務至上主義者。
しかしてその実態は、変態上司と無能な部下の板ばさみになって苦労の絶えない
悲しき中間管理職なのです。

主にソ連の機密情報を巡ってKGBとハードな暗闘を繰り広げるエーベルバッハ少佐ですが、
そのまわりをいつもうろついて茶々を入れてくるのが、もう一方の主人公となった
怪盗エロイカ「伯爵」なのです。
少佐に屈折した愛情を寄せる(ホモだから!)伯爵は、なぜか盗みの獲物が
少佐の任務に関わっていたり、盗みの腕を少佐に必要とされて共同戦線を張ったりして、
いつも、ハードなスパイアクションの世界をかき回してしまいます。

任務一筋の堅物スパイが、楽天主義の能天気な怪盗にからかわれながら必死に頑張る姿は、
何度見ても笑えるまさに一級のシチュエーションコント。
でありながら少佐が、迷惑がりながらも、伯爵のプロフェッショナルとしての腕前には
一目おいている描写が随所に見られ、
馴れ合いではない「男の友情」が描かれているところもポイントが高いです。

伯爵の部下で病的な拝金主義者の「ジェイムズくん」、
テリー・サバラスを思わせるいぶし銀のKGBスパイ「仔熊のミーシャ」、
伯爵を上回る快楽主義者であるイギリスSISのヘボスパイ「チャールズ・ロレンス」など、
多彩なサブキャラクターも魅力的なこのシリーズ、
「少女漫画なんて」と思っている人にこそ読んで欲しい。
 
本作は多分に洋画のシリーズ物を意識していて、少佐の任務達成ごとにひとつの物語が終わり、
状況がリセットされる構成(長さは単行本2、3冊分くらい)。
「No.11 9月の7日間」とか、「No.13 第7の封印」とか、
エピソードごとのタイトルも昔の映画の題名をもじったりして、なかなか凝っています。

途中までは文句なく満点のシリーズ。
ただ東西冷戦が終わった頃に連載は一時休止され(19巻まで)
長いブランクの後再開されてからは質的には若干落ちるような気がするので、
一点減点します。

残念!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-07-17 07:44:50] [修正:2014-07-17 08:02:11] [このレビューのURL]

通算40巻を超える長編ですが、ストーリーなどはないに等しい。
ランジェリー製作と下着の着付け(=女性を悦ばせるボディタッチ)に
天賦の才能を持った青年が、OLや女子アナ、スーパーモデルや果ては
合衆国大統領夫人まで、様々な女性のために「最高の下着」を作り上げ
同時に彼女たちが抱える問題を解決していく姿を描いています。

一件あたり数巻で終わる個々のエピソードに連続性はなく、
大長編でありながらどこからでも気軽に読み返せるお手軽さがいいですね。

それと、私が何よりこの作品で好きなのは、作品全体の雰囲気です。
主人公をはじめ、男性も女性も(エロが大きな売り物である作品の性質上
性的に良識を逸脱する部分はままありますが^^;)ほぼすべての
登場人物が基本善良で他人思い。
主人公を基点に、自分のすべきことに真面目に取り組み誠実に生きている人々が
みんな幸せになって友好関係をたがいに築いていく様子は
殺伐とした世の中に生きている身としては非常に素敵なファンタジーに思えます。

「ただのエロ漫画だろw」とイメージだけで敬遠している方には
機会があれば序盤の方だけでも読んでほしい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2014-06-17 20:09:51] [修正:2014-06-17 20:18:14] [このレビューのURL]