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7.77点(レビュー数:18人)

作者柏木ハルコ

巻数5巻 (完結)

連載誌ビッグコミックスピリッツ:2001年~ / 小学館

更新時刻 2009-11-25 06:33:35

あらすじ ある日、東京近郊に住む相浦くんは父親から家宝の刀の話を聞かされる。刀のことが気になった彼は、春休みを利用して父の故郷に旅立った。が、バスで居眠りしたおかげで"柤ヶ沢"なる集落で一泊するハメに。あくる朝、財布がないことに気づいた彼は帰るに帰れなくなってしまい…

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この漫画のレビュー

「古来日本人は同じ性を分け合っていた」
現代の感覚でいけばちょっと信じられないような話で始まる本作品。
金田一耕介の「八ツ墓村」モデルにもなった近代事件史に名を刻む津山三十人殺し事件など
多くの事件分析が行われているが背景の一因に犯人と複数の村の女性達との
夜這い関係があった事など
ちょっと裏を覗くと、文化の波及が都市部に比べ遅かった戦前の地方では
実は意外に身近にあったものであることがわかる

作品の中で特に光っていたのは村人達の描写。
嫌悪感すら与えるような外のもの(主人公)に対しての避け様と
いざ村の風習を受け、一度仲間意識を持った後のおおらかさのギャップ
そして更なる禁忌に触れたものへの集団的心理を思わせるかのような常軌を逸した行動…
日本のムラ社会的なじめっとした雰囲気をこれでもかと書き表しており
ただただ作品に引きずりこまれるかのように読んでしまった。

タブーに挑戦するかのような民俗学的アプローチのユニークさ、
少年少女の淡い青春とそれを飲み込む村の掟
コミックスの後書きにもあるように作中の小道具の使い方も実に上手い。
また、村での出来事を通した主人公の成長
後半からのジェットコースター感覚の予測のつかない物語運び
そしてエロスに次ぐエロス…

エンターテイメントを追求しながら作品を文学的な域にまで昇華させた、文句無しの傑作。
そして個人的に初めて民俗学、歴史の楽しさについて開拓させてくれたという意味で10点。

冒頭の津山三十人殺しについて
事件後、女性を「共有する」という村の習わしについて周囲の人間は口をそろえて否定し、
犯人一人の異常性にのみ槍玉に挙げたと言われています。
事実は小説より〜とはよく言ったものだと思う。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-12-01 21:35:23] [修正:2008-12-01 21:35:23]

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