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7.73点(レビュー数:42人)

作者こうの史代

巻数1巻 (完結)

連載誌漫画アクション:2003年~ / 双葉社

更新時刻 2011-01-12 13:43:38

あらすじ ある日広島に原爆が落ちました。
そして戦争は終わり、人々は後遺症の影を恐れながらも暮らします。
ただ、その影は時々私たちを縛るのです。

備考 昭和30年、灼熱の閃光が放たれた時から10年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の小さな魂が大きく揺れる。最もか弱き者たちにとって、戦争とは何だったのか……、原爆とは何だったのか……。漫画アクション掲載時に大反響を呼んだ気鋭、こうの史代が描く渾身の問題作。
2007年には映画化された。

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この漫画のレビュー

8点 friendstudioさん

文化庁メディア芸術祭で大賞を獲ったマンガ作品です。
ちょっと高いな〜・・・と思いつつ注文して届いてみたら、かなり薄っぺらい(笑)ほぼ白黒で100ページ足らず。ああーボラれた・・・と、読む前に軽くショック受けました(笑)
まず目をひくのが、トーンどころかベタもほとんど使用していない丁寧な作風。この独特の「風が流れている」感じの画風が作品全体の静かな雰囲気作りにとても貢献しています。人間の書き方に最初ちょーっと違和感を覚えましたけど、10ページで慣れました(笑)。
この作品全体の大きな特徴は、「原爆」をテーマにしながらも当日のシーンは3〜4ページしか出てこないこと。「桜の国(1)」に到っては「原爆」の「ゲ」の字も出てきません。いずれも被爆者や原爆二世の物語で、「原爆ななぜダメなのか」を書かず、「原爆とは(被爆者にとって)何だったのか」ということを追求していきます。この本のキモは原爆二世の七波がボケた?父の後を尾行して広島で一日を過ごす「桜の国(2)」。途中途中で七波の父と母(被爆者)が出会い、そして東京へ移り住むまでのエピソードが挿入されたりと、この一冊の本としてのエピソードを総括する流れを汲んでいきます。逆にむしろ「夕凪の街」のほうは伏線扱いで、かえってただの「原爆漫画」になっています。ちと残念。
が、この作品のスゴい所は、この本全体での最大に盛り上がるシーンに「原爆の悲惨さ」を持ってこない所。「それでも歩んでいこう」という二人の小さな人間の人生を垣間見る部分に、ヒトの真の強さを見ることが出来た気がして、何度読んでいてもそこで胸が熱くなります。戦争があった。原爆があった。それでも日本人はこの60年間で前へ進んできた。決して目をそらすことはなかったけれど、それでも「乗り越える」ハードルでしかない、被爆者たちの力強い、それでいてささやかな、幸せ一杯のラストシーンには、グーッとこみ上げて来るものがありました。最後のページの電車のシーンで、もう一度テーマは語られますが、あの2ページぶち抜きのシーンには敵いません。見事!
この物語、できるだけ多くの人に読んでもらいたいなぁ。多分僕よりも感動できる人間は一杯いるだろうに。映画化ということで、期待しています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 20:51:13] [修正:2006-11-19 20:51:13]

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