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8点(レビュー数:34人)

作者田村由美

巻数35巻 (完結)

連載誌月刊flowers:2001年~ / 小学館

更新時刻 2010-12-19 06:50:18

あらすじ 人類が滅びた近未来、政府プロジェクトにより冷凍保存されていた若者達が目覚め、次々と押し寄せる絶望と困難に真っ向から挑む

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この漫画のレビュー

10点 ジブリ好き!さん

(2010年8月更新、【既刊18巻まで所持】)
先読み不可能、サバイバル漫画最高峰!
圧倒的なリアリティと面白さに驚嘆。完結を待つことなく自分の中で自信をもって満点を付けれる作品。

この作品から感じたこと。それは「アリとキリギリス」に対する反論、もしくはアンチテーゼのようなもの。
「アリとキリギリス」
食糧の集めやすい夏の間に、アリの集団は冬への備蓄のためせっせとひたすら働き、キリギリスはのんびりと音楽に興じる。そして冬が来て、備蓄のあるアリたちは生き延びることができるが、キリギリスは食糧を見つけられず、アリに頼んでも分けてもらえず、死んでしまう。そんなお話(地域により詳細は違うかもしれないが、大体こんな感じ)。

この話を読み聞かせた後、大人は決まって「アリさんが正しい。アリさんを見習って生きなさい」と言う。
確かにアリさんは正しい。
皆で分担して、生きるために必要なことだけを、計画的に機械的に行う。特にサバイバルという状況においては「アリさん」であることが求められるのだろう。だからこそ教師たちは、優秀な夏のAチームを作り上げた。アリさんの象徴のような夏のAを。理論的には何も間違ってないのかもしれない。(そのやり方は問題だらけだが)

では現実に、夏のAチームこそが正しく、理想的な人間像なのだろうか?
14巻で安吾とハルが言い争うシーン。
スポーツも音楽も、暇な人間のやることだ、必要ない、という安吾に対し、ハルは言う。
「じゃあどうして、戦時下でピアノを弾くのさ。絵を描きながら飢え死にするのさ。内戦のさなか、歌を歌うのさ。ボールを蹴るのさ。人として生きていくためじゃないか」

生きるためだけに生きるAチームは、人さえも簡単に殺してしまう。感染の疑いがあれば迷わず撃つ。邪魔になるなら迷わず構える。
彼らは生きるための「生き物」としては正しい。けど、きっと「人間」としては正しくない。
「人間」として正しい姿は、アリでもキリギリスでもない。

夏のAとBの姿は、比較すれば一目瞭然、アリとキリギリスそのものだ。Aがアリの象徴だとすれば、まぎれもなくBはキリギリスの象徴。貯蓄も船の管理もしっかり行わず、遊ぶBチーム。絶望的な世界でも、常に明るい夏のB。機械のように、生きるための活動だけをするAとは全く対照的だ。
夏のBの明るく元気で活き活きとした姿からは、ただアリのように機械的に働く日々からは得られない「人間らしさ」が感じられる。

「人間」として正しい姿、それはアリでもあり、キリギリスでもあることなのかもしれない。
だから、田村先生なら、「アリとキリギリス」をきっとこう子供たちに教えるだろう。
「アリさんは偉くない。アリさんはキリギリスさんと共に生きるべきだった。そうすればアリさんは、ただ働くことしか知らない日々の中で、楽しさを感じる方法をキリギリスさんから教えてもらえた。キリギリスさんは、アリさんに仕事を分けてもらって、生きることができた。お互いが成長できたんだよ。」
人間はアリでもキリギリスでもない。だからこそ、「共存」し、「成長」しあうことができるのだ。夏のチームは、AとBが共に手を取り合って初めて、人間として最高のチームになりえるのだろう。


この物語の主人公はナツだと信じている。嵐でも花でもなく、他の突出した長所をもった魅力的なキャラ達でもなく、暗くてダメダメなナツ。何故か?
死の世界で生きていくのに、アリのような優秀さも、キリギリスのような明るさもいらないから。
知らなければ教わればいい。一人でできなければ協力すればいい。
そう、これはナツの成長譚。「成長」を武器に、ナツでさえ、地獄のような世界で生きていく力を身につけてゆける。
そんなメッセージが込められた作品だと思うから、自分の中ではナツが主役なのだ。(もしくは、自分がナツ並にダメダメな人間だから震災後のような地獄の世界でも希望をもって生きられるようそう思いたいのかもしれないが…)


暗く残酷な話だけれど、どのチームも「人間らしく」生きようと成長していく姿が読んでいて非常に心地よい。秋だって成長できたのだから、夏Aもできるはず。田村先生曰く、ラストは考えてあるからいつでも終わらせられるとのことだが、いつまでもみていたいような、みんなで手を取り合って暮らすENDが早くみたいような…

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-03-12 22:12:47] [修正:2010-08-24 16:45:39]

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