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8点(レビュー数:2人)

作者谷口ジロー

原作関川夏央

巻数5巻 (完結)

連載誌漫画アクション:1987年~ / 双葉社

更新時刻 2009-12-30 16:33:28

あらすじ 明治三十八年。現代人たる我々が想像するより明治は、はるかに多忙であった。漱石 夏目金之助、数え年三十九歳。見通せぬ未来を見ようと身もだえていた──近代日本の青年期を、散り散りに疾駆する群像をいきいきと描く、関川夏央・谷口ジローの黄金コンビが放つ一大傑作。

備考 1998年 第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。

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「坊っちゃん」の時代のレビュー

点数別:
1件~ 2件を表示/全2 件

8点 torinokidさん

谷口氏・関川氏コンビの名作。面白いです。
舞台は明治時代、主人公は当時の文学者たち。

基本的に史実に基づいて描かれているため、
ともすれば単なる「資料漫画」になりかねないところだが、
ちゃんと「マンガ」として成立しているところは素晴らしい。

内容的にはかなり固いので、万人受けはしないかもしれないが、
一読する価値はありだと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-01-13 17:04:14] [修正:2012-12-06 11:18:58] [このレビューのURL]

8点 景清さん

ゲームの世界には、人気のある漫画やアニメのキャラを使った「キャラゲー」という分野がある。このジャンルは往々にして「出来は二の次、とりあえず人気のキャラを出せば原作ファンは買うだろう」という志の低い作品が多いが、中にはキャラの魅力を生かしきると同時にゲームとしても優れた骨格を有する良作も存在する。しかしいずれにせよそれらを楽しむには、原作となった作品への愛着や造詣が深ければ深いほどいい事に変わりはない。

本作「「坊っちゃん」の時代」を無理矢理乱暴にキャラゲー的に例えてみると、「スーパー歴史人物大戦M(meiji)」である。明治時代を舞台として夏目漱石ら文学者を筆頭に思想家、財界人、果ては博徒にテロリストまで様々な有名無名の歴史人物の往来を虚実ないまぜのエピソードを交えて描く本作は、当然楽しむ為にはそれなりの前提知識を要求される。
そういう意味で決して無条件に万人にお勧めできる作品ではないし、こんな事を書いてる評者自身不勉強ゆえに本作を味わい尽くしたとは言いがたく、読んでてよく分からなかった部分もあった。

が、それでも本作を推したいのは本作が単なる歴史漫画や教養を売りにした漫画を超えた普遍的な物語性を強く有しているからである。「青春の光と影」という普遍的なテーマを。
明治時代は偉大さと愚かさの同居したまさしく日本の青春時代であった。そんな世の中とオーバーラップするように、個人主義や自由恋愛などの新しい価値観を持て余しながら時に痛ましく、時に滑稽に描かれる本作の登場人物達の姿は紛れもない明治人の栄光と暗黒の両面であり、同時に100年経っても変わらない青春物語の原風景でもある。特に生粋のダメ人間である石川啄木を主人公にした第3部など、むしろ現代だからこそ受け入れられやすいだろう。(個人的な話だが学生時代と社会に出た後でこれほど読後感が変わったエピソードはそうは無い。)

「よしよしお前の言いたい事はよく分かった。でも、何でわざわざそれを漫画で発表する必要があったの?別に小説とか評論でいいじゃん、ブンガクが元ネタなんだし。」
こういう意見もあるだろうが、本作の完成度を1段も2段も底上げしたのは、関川夏央の原作は勿論、結果的には作画を担った谷口ジローの筆力によるところが大きい。
近年「孤独のグルメ」などで注目の高まった谷口ジローだが、本作でもその高い画力を遺憾なく発揮、個人の肖像から時代の遠景まで縦横無尽のカメラワークを駆使して明治を描ききっている。群衆の暴動や博徒同士の決闘などの動きのある画もいいが、人物の微妙な表情や心象風景を表現した一枚絵もクオリティが極めて高い。(第3部に登場する斜めにそびえる浅草十二階など白眉である。)
死の淵をさまよう夏目漱石のめくるめく脳内妄想を描いた第5部に至っては、もう作画への信頼無しには成立し得なかっただろう。
漫画には不向きと思われる題材を臆することなく描きいったことで、結果的には「漫画」というジャンルの表現力の可能性を示せただけでも、本作の意義は大きいのだ。

先ほども言ったように無条件に万人受けする漫画ではないけれど、しかしゲームの「スーパーロボット大戦」シリーズが純粋にゲームとしてもよく出来ているのと同じように本作も優れた漫画作品であるから、興味を持たれた方は是非一度読んでみて欲しい。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-02 17:53:38] [修正:2010-01-03 21:46:32] [このレビューのURL]


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