「シマヨト」さんのページ

総レビュー数: 3レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年07月11日

作者が得意とする、試合を魅せるというよりはスポーツ哲学的な熱血バレー漫画。
内容もキャラも「メジャー」の方が好きですけどこちらも負けず劣らず王道を突っ走ってますね。
メジャーに無い、作品自体がピークな所でスッパリ終わったという良い点もあります。
無気力な部員の集まる落ちこぼれの坂見台バレー部に小柄でひたむきな性格のバレー少年・井口健太と
長身で豪胆なアタッカー・前田隆彦の二人が入部し衝突と和解を繰り返しながら
新入生を加えるというイベントを交えつつ、やがて全国校である打倒誠陵を目指すようになる・・・
とまぁ目的意識は結構ハッキリしてます。

この作者、絵柄については結構記号的な描き方をしますよね。不満のあるレベルではありませんが
たまに違和感の沸くキャラが居ます。

登場人物についてですが、前田はまんま吾郎さんですね。健太は寿也+小森÷2といった所ですか。
前者は骨を痛めて無理矢理試合に出るために痛み止めを打つエピソードまで共通してます。
ただし、メジャーのそれと違いこの二人はチームメイトである為、常に両者を高めて磨いて成長しています。
前田は一回戦で健太にストップされたしね。

当の健太は途中セッターでレシーブ一徹のいわば「支える側」の人間で才能を持たず努力で叩き上げて
好感の持てるタイプなんだけど、正直2年以降の彼はかなり好き嫌い分かれると思います。
稲場の引退早々キャプテンを任されて苦労苦難も多いですが彼の精神論、特に大学との練習試合で
前田のリハビリが上手くいかなかった時に取った行動は今でもどうかと思いますね。
先輩トリオも最後までドラマが用意されてるしキャプテンの稲場も後半近くまで健太達をサポートしてくれますけど
部員自体にそこまで突出した印象はありません。(一人レギュラーから外される原のエピソードは良いです)

2年になり坂見台も団結力が生まれ友情の強いチームに成長している訳ですが
そういった要素に甘えない、断固たる厳しさを持った指導で健太達に当たった鬼コーチの江藤は良いスパイスでした。
彼も最終的に健太達の友情に乗っかる形になるんですけどね。
他校キャラもそれほど増えすぎずそこそこ角も立っていたんで問題ないレベルでしょう。
あえて言うなら前田兄が最終戦で大した見せ場も無くボコボコにされていた事ぐらい。

試合中の心理描写とか、特に健太なんかクサすぎるぐらい真っ直ぐなんで
そういう所は及第点ながらそれ以上を求める人によっては、ちょっとキツい面もある印象です。
最後のオチは物議を醸したそうですが・・・実際見てあまりにも斜め上だったのでびっくりしました。
スラムダンクの河田も驚きますよ、培ったレシーブ技術を全部ブン投げたのはどうかと思いました。

全体の流れは一つ一つ壁を乗り越える起伏とカタルシスがはっきりしていてテンポ良く進むので
サクッとしたメジャーが読みたい方はどうぞ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-07-11 20:38:14] [修正:2009-07-11 20:38:14] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

読んでいたのは途中までですが、凄く面白かったです。(近年は間延びしすぎてあまり評判が良くないだとか)
ゴルフ漫画、いやスポーツジャンルでもかなりレベルの高い作品だと思いますね。
遅咲きのプロゴルファー、沖田圭介のストイックでゴルフに対する貪欲な姿勢に圧倒され、
綿密すぎて時にはクドいくらい、一打一打にも気を抜かない心理描写には重みを感じます。
ゴルフそのものに関してはあらゆる面で本格的な貫禄のある内容です。

コース内外問わず、琴線に響くような人間ドラマが多いです。序盤の宇賀神さんの死や
(一方的にですが)激しく対立し、その後キャディを経て和解する長谷川が居ますが
一番記憶に残ったのはアジアサーキットから登場したキャディのチッタ君ですね。
彼は酒癖が悪くタイオープンでいきなり大きく寝坊して、沖田は一人でコースを周る事になり
フィリピンに逃げ帰る直前で思いとどまり一言謝ろうとコースに向かうんですが…
その時の沖田の反応がまた・・・!叱るでもなく励ますでもなく、ただ笑顔で相棒の到着を待っているんですよ。
もの凄い人間性を持っています。耐えられず嗚咽を洩らすチッタの姿に思わず感情移入せざるを得ませんでした。
話は飛んで、サーキット終了後の別れ際にチッタが受け取った封筒の中にとんでもない物が入っていて
その時のチッタとデービス達の反応がまた切なさ満点でたまらないエピソードでした。

他にも、リリィや前述の長谷川などこの作品は魅力的な存在感のあるキャディが印象的ですね。
デービスのような陽気な人間もコース上ではギリギリの戦いで精神を燃焼させるのが熱いです。

あとこの作品、ゴルフやその周りの出来事を通じて人生観を追求する描写が随所に見られる。
かなり完成されている漫画ですね。

多分、全巻中読んだのは半分くらいだと思うんですけどそこまでなら面白さは保障できます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-07-11 17:44:05] [修正:2009-07-11 17:44:05] [このレビューのURL]

誰が何と言おうと、僕は好きです。
最近よくある小さい起伏が続くタイプの4コマ(この手のタイプの中では結構昔からあったんだけどね)
3巻以降はかわいさの表現に磨きがかかってきて話のテンポが良く続く原作の方が好き、特に
番外編っぽい氷姫とこなたのママンの話はお気に入り。
卒業後も普通に続いてる様だけどこの後どうするつもりなんだろうか…

そもそもコピーという言葉自体良い意味に用いられないのが当たり前だというのは置いといて
この作品があずまんが大王の一世代後の4コマ作品群の中で特徴的な点なのは
物語冒頭から泉こなたというキャラクターが持つ、ある種のメタオタク的な雰囲気だろう。
このキャラは女性という身でありながら性格趣味趣向はモロに男オタのそれで、しかも
父親の英才教育を受けて育った、ある意味超サラブレッドの人間。故にめちゃくちゃアクの強いキャラ。
こなたが雑談の中心に位置すれば当然誰と絡もうがその雰囲気が作品全体にも作用してオタトークも増える。
とにかく受動的なオタクの生態に関してはひとつ残さず描いてる感じがする。
それがこの作品の長所でもあり短所でもある故に「濃い」「狭い」という烙印を押されるんだろう。
まぁそのオタトークも斜め上だろうが堕落しているこなたを容赦なく叩けるかがみが出てこないと締まらないんだけどね。
両者(かがみはラノベ読者)の位置づけを利用して「オタクor一般人」の線引きで遊ぶようなネタもちらほら。
(生態観察という意味ではラノベを進めるかがみとドラマCDを聴くこなたのネタはいかにもな核心に触れてますよね)

その中で日常に潜んだオタの葛藤をこなたの描写を通じて気持ちよく消化できる点はこの漫画の非凡な要素だろう。
好きな作品の人気が出るのは嬉しいけど複雑な気分になるファン心理の話とかいいじゃないですか。
やたら自分を神輿扱いして持ち上げる周りの人間を皮肉ってるみたいで。

こなた以外の、それぞれのキャラの持ち味を加えた日常話も決して出来は悪くない。
ハイテンションで明るいバカキャラの日下部みさおは純粋に微笑ましくらき☆すた唯一の健全な面。
こなたが受動的なオタクであるのに対してひよりが能動的なオタクであるのもカバーが広いです。
定期的に生き恥晒し首の刑に処されるみなみとか、つかさが訳の分からないネタを提供してくれる話とか面白かったなあ。
逆につまらないネタはとことんつまらない。TVに映るあきらを眺める話とか明らかにネタ切れだったのが伺える。

キャラを魅せる技術はかなりのもんだと思いますね、あるあるネタなんて言ってもオタ的なあるあるが多い訳だし
インドアな趣味に無知識な人間でも、作品自体は単純にキャラを楽しむ漫画という面ではかなり秀逸なんで十分楽しめます。
こなたも初期は根暗なオタク臭が凄かったけど、だんだん可愛げのあるキャラになってきたしね。
しかし4コマにしてはキャラが増えすぎた感があり、作者もいくらか持て余してるんじゃないでしょうか。
絵柄に関しては、初期は発展途上というイメージですが巻を重ねるたびに洗練されたデフォルメへと変遷しています。
総じて読み進めてジワジワ来る内容であり、あずまんが大王の後追いグループの中ではかなり好きなタイトルでした。

追記:
この4コマ漫画、学校が舞台でありながら体育祭、あるいは文化祭だとかお決まりのイベントごとが無い。
(その辺りがアニメでは結構追加されてる)
イベントに言及するお話はあるけど、それも学校では授業・休憩時間・HRでの会話が多く、
いわゆる漫画としての状況作りに非日常的な舞台をあまり選ぼうとしない。
こなた達3年生の卒業式でさえ、本当にサラっとしてる。

翻って休日の話を見ても形式的に全くイベントが無いという訳ではないが
やっぱり大抵自宅、友人の家だとかショップにいて、クリスマスはイヴだし海も本番は見せないで次の話に飛ぶんです。というか
そもそも、そういった状況自体を作らずに唐突に会話から始まる事もある。どっちにしろ表立った非日常は抑えられています。
結果的に純粋な日常の会話劇と日常の中の小さな非日常が全コマ中でもかなり大きな割合を占めている。 
らき☆すたは、そういった手法で読者の脳内にキャラクターの輪郭をひたすら刻み付ける事を選んでるんですね。

そんな珍しいモノでもなく単なる手抜きで一蹴すれはそれまでの話ですし(画に関しては手抜きしてる所もありますね)
それが是か否かは大抵会話やキャラの反応が面白いかそうでないかで決まるから良し悪しなんだろうけど
5年間以上それを崩さず続けている、その一貫した姿勢が好きです。
作者にそういった非日常にある状況を描くつもりがないのか描いても技量のたかが知れてるから描けないのかは知りませんが
終始日常の1カットをベースに描いている漫画なんだからどうでもいい話ですね。

逆に学生であることの必然性は気になりますが
仲間内でダベってる雰囲気は読んでいて学生特有のモラトリアムを感じるし、学生であることの意義は感じます。
元々中学生設定で始めようとした所をコンプ読者層に合わせて高校生に変更するよう言われたという話もありますし。

まあ、そんな事考えていても
最後のHRはやっぱグッと来ちゃうよなぁ、あれは。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2009-07-11 11:27:46] [修正:2009-07-11 11:27:46] [このレビューのURL]

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