「若禿」さんのページ

総レビュー数: 3レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月10日

【既読率】

・完読(読み返し4回程度)

【長所】

・後述

【短所】

・極端に人を選ぶ


【評】

漫画界における異端中の異端、漫☆画太郎の代表作。
このレビューはこの作者のほぼ全ての作品に共通する物になるが
とにかく短所をあげればきりが無く、
迫力こそあるものの、トーン、ベタどころか
定規すらまともに使っていないだろう、汚い画風。
出血嘔吐排便等、凄まじいまでの生理的嫌悪描写。
そしてなにより、コピーによって同じコマを大量に使いまわし、
前回の話の流れを全く無かった事する様な
商業漫画にあるまじきストーリー展開。

漫画界のクソと呼ばれるものを全て集めた様なクソ漫画だ。



しかしこの漫画はクソ漫画であってクソ漫画でない。


それは作者があえて「狙って」クソ漫画を書いているからだ。


それ故、その点に気づけた人にとっては
前述した短所が全て長所に見えてくる。
酷すぎる展開が純粋な酷さにならず、
その酷さこそがこの漫画の真髄と捉えれる様になり、
腹を抱えて笑えるほどのギャグ漫画になる。

そして終いには誰がどう見ても打ち切りの幕の引き方が、
この作品の最も正しい締めかたの様に見えてくる。

これは名作漫画の緻密に構成された伏線などよりも
ある種高度な計算だ。


そして漫画界においてこの様な作風を許容され、
今もなお、漫画家として存在できている漫☆画太郎は
間違いなく奇才だ。恐ろしいまでの……



他のレビューアーの方の評する、
0点こそがこの作品に対する最大の賛辞という点は
大いに共感出来るものだが、
私は冷静に分析して、この奇才漫☆画太郎の代表作とも言える
本作は、純粋な賞賛も相応しいと考えるのであえて9点をつける。

10点でも良い気もするが、10点にこんなクソを据えると
私が他に10点つけた偉大な漫画が汚された気分になるので
泣く泣く1点マイナス。



この漫画は紛れも無いクソ漫画だ。
多くの人にとっては手にも取りたくない酷い漫画だろう。


しかしこの漫画は芸術だ。



ナイスレビュー: 4

[投稿:2010-04-07 05:01:21] [修正:2010-04-07 05:21:39] [このレビューのURL]

【既読率】

完読(1回、誌上にて)


【評】

笑いのつぼと言うのは人によって千差万別であって、
そういった点からギャグ漫画を客観的にレビューするのは難しい事になります。
笑わせる事が目的の漫画である以上、ギャグ漫画の評価というのは、
結局、自分が笑ったか笑ってないかに左右されてしまい、
ここが良いとか悪いとか論ずるのはつまり、
ここで笑ったか笑ってないかという、私的な物になってしまいます。
ですから私はこの漫画で何一つ笑う事が出来なかったので0点をつけます。

ちなみに何一つ笑う事が出来なかったギャグ漫画はこの作品のみです。
それでもやはり、前述の通り笑いのつぼと言うのは人によって千差万別であって、
この作品で笑う事の出来る人はいると思いますし、
その人にとっては良い作品となるでしょう。

ただ、未読の方が侮蔑精神以外の目的で、このギャグ漫画を読もうとするのならば、
ここのレビューの平均点を参考にして下さい。
後は確率の問題です。


私が本当に0点をつけてやりたいのは、
作者では無く、この作品を連載させた編集部です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-10 07:10:53] [修正:2010-01-10 07:36:41] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

【既読率】

・完読(読み返し5回以上)

【長所】

・奇跡的と言って良いほどのストーリー構成の上手さ
・エンターテイメント性とメッセージ性のバランスの良さ
・全10巻(完全版8巻)という一気読み出来る長さ

【短所】

・グロテスク描写
・画力の低さ
・作者の(服装)センス


【評】

現在200タイトル以上漫画を読んで来た自分だが、
1つだけ選んで賞賛しろと言われたら、迷わずこの作品を挙げる。
とにかくストーリの完成度が高く、伏線の張り方、回収の上手さは何度見ても感心させられる。
そしてその完成されたストーリーから発せられるメッセージ性の高いセリフの数々は、
多くの人の心に響くだろう。

それでいて、アクションや恋愛要素など、
単純なエンターテイメントとしても楽しめる内容な為、
ほぼ、万人に薦める事の出来ると言う稀有な作品である。


短所としては、まずグロテスク描写があるが、
この部分無しには成立しない作品なので短所と言ってはならない気がする。
ただ、どうしてもこの点で読めないという人はいると思うので短所として挙げる。

また正直、画力は低い部類。
時代と作者のセンスを感じる登場人物の服装はともかく
背景(特に建物)の絵はひどいと言わざるを得ない。
ただ、作品の内容を損ねる類の物ではないし、
人物の感情表現はむしろ秀逸なので大きく減点は出来ない。


構成的な部分で欠点を指摘できる点が全くと言って良いほど無く、
この作品を貶める為には難癖でもつけないといけない。
そして、その様なレベルの作品は自分はこれ以外知らない。

もちろん、各所での高評価の割りに面白くなかったと言う人もいるだろうし、
その意見は否定できない。

しかし、例え肌に合わず低評価をつけたとしても、
漫画界におけるこの作品の偉大さに気付けない人は、
数を読んでいないか、漫画に対する接し方が私とは違うと言う事なのだろう。


漫画に娯楽以上の物を求めている人は、間違いなく読んで損は無い
傑作中の傑作と評価して10点満点をつけます。



【最後に作品完結後の作者の後書きを一部を引用させて頂きます】

「いくつかの、変更、計算外の展開はあったものの、
不本意な方向に流される事なく、物理的、精神的妨げやアクシデントにも殆ど見舞われず、
無事完結までこぎつけた事は幸運と言う他無い。
心より「ありがとう皆さん」と言いたい気持ちである」
「寄生獣」という作品はあくまでも「岩明均にしては」と
但し書き付けながら、上手くいった仕事である」


果たして、
この様な後書きを書く事の出来た作者は、過去幾人いただろうか?
漫画という長期に渡る重圧の中書かれ続ける媒体において
この様な終わり方を迎え入れる事のできた作者とアフタヌーン編集部、
そしてそれを支持した読者に対しても、最大の賛辞を送りたい。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2010-01-10 06:34:33] [修正:2010-01-10 07:28:53] [このレビューのURL]