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6.73点(レビュー数:26人)

作者岩原裕二

巻数6巻 (完結)

連載誌コミックビーム:2002年~ / エンターブレイン

更新時刻 2010-08-15 12:05:56

あらすじ 世界に蔓延する石化病、メドゥーサに感染した人々は、古城を改築した施設の中で冷凍睡眠についた。
だが、彼らがふたたび目覚めたとき、城は獰猛なモンスターがはいかいする荒れ果てた廃墟と化していた。
奇病による死と凶悪な怪物、二つの死に囲まれたなか、いばらの伝う古城を舞台に始まる、生への脱出劇。

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この漫画のレビュー

9点 ジブリ好き!さん

石化して死を招く怪病・メデューサから始まる、地獄の古城脱出活劇!


中学でたまたま手にして以来、もう何度読み返したかわからないくらい大好きな思い出作品。「古城」を「脱出」するサバイバル・パニックだなんて、俺好みもいいとこ♪
パニック系特有の登場人物達の狼狽・疑心・不安、そして必死に状況打開を目指して進んいき、次第に全貌が分かってくる感覚。たまりません!


作者が言ってる通り、「低予算のハリウッド映画」って雰囲気です。いわゆるB級映画のノリなんですが、そう銘打つことで、誰でも安心して楽しめるし、ラストのご都合主義さえも「アリ」にしてしまうわけです。何よりノリやバトルこそB級感あふれていますが、この作品最大の魅力は「ミステリー」要素!

そう、ラストのどんでん返しが凄いのです!

散りばめられた伏線が、じわじわと回収されていき、終盤に真の敵・ゼウスから真実が明かされます。それだけでも十分なミステリー要素なのですが、圧巻なのは、ラストにカスミがドでかい怪物に突っ込んで知る姉妹間の秘密、隠された真実。世界観が一気にひっくり返ります。

ゲームのメタルギアシリーズに似たどんでん返し。ただ、MGSほど事実が2転3転するわけではないし、伏線も少ないのが残念。その代わり、ひっくり返り具合は凄いですよ!


全6巻という読みやすい巻数も絶妙!テンポがめちゃめちゃ良く、スピーディで無駄がない。加えて僕にジャケ買いさせた画力の高さ!また、作者はアニメ「Darker than Black」のデザイン担当者です。そのデザイン力&画力で描かれるモンスターや古城の雰囲気は、もう素晴らしいの一言!完成度の高い一品です。

世界がどうなっているかは明かされず、古城で始まり古城で終わります。そんなところもB級映画さながらですが、世界編をやって巻数が増え、また読者の期待値だけが高まっていってしまうよりは、良い終わらせ方だったかと。あの長さだったからこそ、ミステリーも前面に出てくるわけだし。
しかし、そんなこと以上に、あそこで終わらせたことには作者の意図を感じます。(詳細は以下)

今月映画化された話題作、ぜひ1度、いや2度3度とご賞味あれ!


(以下、ネタバレあり)
メデューサは、トラウマなどの強い思いにより、想像を具現化する力があります。作中では主にいばらやモンスターなどの有機物が具現化され物質化してましたが、終盤のモンスターが武器を生成していることから、無機物もできそうです。そうすると、古城という世界が現実か否か、最初から存在したものなのかどうかも怪しくなってきます。
加えて記憶をもった人も生み出せる。自我や自己の実在性も不確かなものなのです。
オマケで描かれた映画のカットのような世界や、監督のメデューサは、そうしたことを暗に示していると思います。つまり、世界がどうなっているか以前に、古城自体が世界なのかもしれないし、古城なんてものは世界のどこにもなかったかもしれないわけです。
あまりうまく言えませんでしたが、作者自身、世界を描くことの意味を感じていないことが、オマケ漫画から伝わってきました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-08 01:36:05] [修正:2010-05-06 15:03:42]

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