八百森のエリーのレビュー
8点 朔太さん
また、凄い漫画が出てきました。
職業漫画は、一般に知られていない世界を紹介してくれる魅力があって、
大抵の場合に見逃さないようにして読んでいます。
今回も野菜の仲卸し業界を舞台にしており、作家さんの旦那さんが本当に
青果卸会社勤務ということで、かなりリアルな内容が期待できます。
読んでみると、野菜だけでなく、流通の仕組み、マーケティング、経済原理などの根幹に触れた知識で、展開を盛り上げています。
私も戦後70年存在する中間仲卸問屋の存在に長く疑問を持っていました。
今でもJA などには敵意すら感じています。
しかし、この作品を読んで金融的役割を担う仲卸や、小売りへの多彩な品揃えを
手助けし、時には特売品企画を提案したりと、なるほどその存在意義は高いと考え直しました。
返す刀でメディアの無責任な報道、地方自治体の無計画で実態からかけ離れた
就農支援などをなで斬りします。
役所で自殺者を出してしまうシーンは、なるほどと頷かされます。
一方、職業的専門知識が中心にはなっていますが、面白さはそこにとどまらず、
ギャグもかなり効いています。
主人公が、野菜バカで仕事にしか目が入らないので、就職時点で恋人を捨ててしまいます。
上司の掛け声は「野菜に人生捧げられますかー」ですからね。
顧客であるバイヤー谷さんも見逃せないキャラです。
無茶ぶりは半端ないですが、何か流通全体を俯瞰する視点は、作者の代弁を度々してます。
従来になかった異色の分野の漫画として、長く記憶に残りそうです。
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[投稿:2025-07-26 11:04:53] [修正:2025-07-26 11:04:53] [このレビューのURL]