キック・アスのレビュー
8点 booさん
ごく普通の男の子がコスチュームを着てヒーローになろうとするとこんな凄惨なことになってしまうのね。
いやー、本当に血みどろ。バイオレンス。
内臓とかそういうのはないからそこまでグロくはないけどなかなかにえぐい。アメリカは日本よりかなり表現規制が厳しいんじゃなかったかな?よくパス出来たなぁと思いつつ読めるのはありがたいです。
私達が生きる現代の世の中、コミックオタクの少年デイヴはこう思った。”これだけヒーローコミックがあふれているのに、なぜ誰一人本当にヒーローを目指そうとしないんだ?”
何となく分からなくもない気もする。そう思うだけならね。
しかしこのデイヴの一味違う所は、いくら現実に不満で、現実と向き合いたくなかったとしても、本当にヒーローになろうとしてしまう所だ・・・そう、キック・アスに!
デイヴに超人的な力なんてない。というかコミックオタクでスポーツをしているわけでもない彼のことだから恐らく平均的な高校生より運動能力は低いだろう。コスチュームだってブルース・ウェインのように金持ちではないからウェットスーツに自作の改造を施しただけのものだ。
そんなデイヴが街の自警団として不良やマフィアに立ち向かった時にどうなるのか、そして彼は殺し屋少女ヒット・ガールに出会って何に巻き込まれていくのか・・・という物語。
最高に刺激的で、素直に楽しめる作品。最初から最後まで興奮しっぱなしですよ。
アメコミは作家の思想性が強く出てて、しかも文字数が多いから比較的日本の漫画に比べて読むのに時間がかかる作品が多い。でもこのキック・アスはエンタメ性が強くてすごく読みやすい上に、それでいてマーク・ミラーの工夫だったり新しいヒーローものの形の模索というのは上手く表現されているからもう脱帽するしかない。さすがは現代アメコミ界希代のヒットメーカー。
そもそも冒頭から話にすごく引付けられる上にその後の展開もおもしろいんだよなぁ。やっぱり先が読めないって大事だよ。すごく楽しいしわくわくする。ヒットガール登場あたりからはもう一気にぐわぁぁーーとね。
普段あまりアメコミを読まない方にも自信を持っておすすめできる作品。
上に書いたように非常に読みやすい上に、わりと日本の漫画に近いと思うから。美少女(幼女か?)が悪人を銃や剣で殺戮するというのもそこはかとなく日本的だよなぁ。ということでヒットガールはもちろん私のお気に入り。何とも可愛くて、凄惨で、悲しきヒーロー。
しかし何気にオタクに対して相当手厳しい気がする。デイヴは結局強くなるわけでもないし、大きく成長した様子は見せない。オタクはずっとオタクで、ヒーローはずっとヒーローだ。それは当たり前だけど、何となくさびしい。
ちなみにマーク・ミラーはキック・アス2を描いているらしいです。映画の続編も決まったことだし、その公開と併せて邦訳が出てくれることを切に期待します。
ヒットガールは出るのか?、レッドミストはどうするのか?、わくわくは尽きない。
【追記】
書き忘れてたけど、映画も傑作。同じ素材でも調理によってここまで違う料理になるのかと。セットで読むとよりおもしろいのでおすすめです。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-01 01:59:52] [修正:2011-10-09 16:09:09] [このレビューのURL]
6点 columbo87さん
スーパーヒーローに憧れるオタクが本当にコスチュームを買って夜間徘徊するという・・・
このあたり、子供のころヒーローごっこしてたものとしては胸をかきむしられる。
設定としてはそれほどぶっ飛んだものではなく、日本人の感覚でも結構すんなりと読めるのでオススメ。
というか、歴史の長いシリーズものじゃなくて独立した作品だからメチャクチャ読みやすいっていうのがデカイw
途中からスーパー父娘が登場して雰囲気が変わりますが、全編に渡り徹底してリアリズムを追求した(この内容でリアリズムどうこういうのも気が引けるが、話の筋は一貫していると思う)内容になっているので、爽快なヒーローものを期待しちゃうと非常に後味が悪いです。
ただこの作品がどういう方向を目指しているかは最初の導入で十分に提示されるのでそんなに混乱することはないんじゃないかと・・・
あと、映画と比較して見ると面白い。たぶんどっちから先にみても問題ない。
ぼかあ作品としては漫画の方が好みだが、細かい設定や心理、人間描写のリアリティは映画の方が勝ってるとか思ったりする。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2011-10-04 20:27:59] [修正:2011-10-04 20:27:59] [このレビューのURL]