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WE3


6点(レビュー数:1人)

作者フランク・クワイトリー

原作グラント・モリソン

巻数1巻 (完結)

連載誌DC Comics:2004年~ / 小学館集英社プロダクション

更新時刻 2012-02-18 13:21:27

あらすじ 主人公は、政府に大量虐殺兵器に改造された犬、猫、兎の3匹。ある日、その政府は彼らを廃棄処分にすることを決定する。翻弄された彼らは政府の追手から逃げていくのだが......。 原書は『ウォッチメン』『Vフォー・ヴェンデッタ』等を刊行しているバーティゴ・レーベルから出版されたので、多少グロテスクな描写もありますが、大人が楽しめるコミックとなっています。

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WE3のレビュー

点数別:
1件~ 1件を表示/全1 件

6点 booさん

 グラント・モリソンといえば頭がおかしいという話をよく聞く方。宇宙人に誘拐されたとか、自身のコミックの売り上げを上げるためにファンに同じ時刻にオナニーをさせようとするとか、魔術師としてムーアと張り合うとか、色々ネタにされてます。実はアーカム・アサイラムをまだ読んでない私はこれがモリソン初体験。

 WE3はDCのヴァーティゴという作家性の強い作品を中心に扱う大人向けのレーベルから刊行された。
 生物兵器に改造され、さらには廃棄処分にされそうになった三匹の動物達の逃亡劇。彼らの友情、そして悲哀が描かれていく。

 タイトルが似ているのと3匹の動物達の話ということで、どうしても比べたくなるのが手塚治虫のワンダースリーなのだけれども。まあ多分偶然の一致だとは思う。基本的に全然違う話だし。
 ただワンダースリーを読んだ者としては、大森望さんの帯にある“もうひとつのW3”という言葉にはなかなかぐっと来るものがあるなぁ、と。そして読んだことのない人にとっては何のことやらだろうなぁ、と。気になった方はW3の方もおもしろいので読んでみたら良いかと。

 モリソン自身も後書きで語っているように、ストーリー自体はものすごくシンプルで分かりやすい。ただ安易にお涙頂戴に走らないモリソンの演出はすごく好みだった。明らかに感傷的なお話なのに硬派な雰囲気。下手な作家だったらかつての飼い主のエピソードなんか入れそうなものだけど、そういう余計なものは一切ない。
 もしかすると人によってはあっさりすぎると思うかもしれない。でもそこが良いのだ。削ぎ落とされたからこそ生まれるものというのは確実にあって、だからこそWE3の勇気や友情、悲哀というものが心に沁みる。

 結末も良かったなぁ。全体的にWE3に出てくる存在って色々矛盾してると思うわけです。動物達を残酷な生物兵器にしちゃった博士なのに誰よりもその動物達を愛しちゃってるとか。人が死なないために作られた生物兵器が人殺しまくりだとか。イイイヌ、ヒト、タスケル、なんて言いながら人殺しまくりのイヌとか。動物達のほのぼのとした会話に心が動いた次のページではやっぱり人が死にまくりとか。善人と思われる人が間違ったことをしちゃったり。生物兵器を利用してきた人が見せる優しさだったり。
 そんな善悪が混沌としている世界で、3匹が間違いなく勝ち取ったもの。簡潔ながらもそれがラストにはぎゅっと詰まってたように思う。正直ほろっと来ました。

 クワイトリーの緻密なアート、そしてモリソンの大胆な画面構成というのも見応えがあった。導入部の静かな緊迫感や、また弾丸が体を貫く時の3Dを思わせる演出には思わず息を呑む。モリソンが超自画自賛してた程かどうかは知らないが。

 ヒーローものでもないし、ちょっとアメコミを読んでみたいなという方にもおすすめしたい良作です。ただ文法的に漫画により近いのはキック・アスかもしれない。
 けっこうえぐいのに動物愛がしっかり感じられるあたりもおもしろい。3号(ウサギ)のウンコ爆弾には思わず胸がときめきました。やっぱりボッコ隊長といい自分はウサギ派ですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-02-18 13:22:13] [修正:2012-02-18 13:22:13] [このレビューのURL]


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