「red-eyes」さんのページ

総レビュー数: 5レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年12月06日

ボディブローのように効いてくる傑作。”完璧な女性”を描いた作品。

 恐ろしいほどの美貌をもつ叶小夜子が、自らに降りかかる火の粉を「女の力」で振り払っていく、という話。ホラーミステリー?

 はじめて読んだのは健全な(?)男子高校生だった17歳の時。女性の恐ろしさをぶつけられ、コドモゴコロに衝撃を受けた。読み終わった後、吐き気を催したのを覚えている。女性の事をろくに知らず、SEXも覚えたての当時の僕には、ヘビーすぎたのだろう。

 最近になって、改めて読んでみたが、やはりすごい。軽い言葉でオブラートに表現すれば「女の言うイイ女と、男の言うイイ女は違う」。そして、24歳になった今でも、ぜんぜん修行不足だな…と思い知らされてしまう。

 女からみた完璧な女は、果たして幸せだろうか?作中では、小夜子は、登場する男のほとんどを手玉に取っている。手玉に取っていない男は、自らの父と祖父ぐらいではないか。この作品に登場する主な男は、形こそ違えども、彼女に服従を強いられている。

 もっとも、この男を手玉に取る強大な力は、自らの意思に反した結果をも生む。主人公の死は、小夜子にとって予想外の出来事であっただろうし、作中で唯一ミスをした点である。”完璧な女性”であったとしても、幸せになれるとは限らないということなのかもしれない。

 構成自体は、結構単調。男の暴力と女の色、というワンパターンな展開が何回か続く。物語が短いから耐えられる。最後は一気に話が進む。

 吉田秋生らしい、性をテーマにした作品。四半世紀ほど前に書かれた作品ではあるけれども、現在でも十分通用する。草食系男子が流行る今の世を、作者はどう思うのか、聞いてみたい。

 ホラーミステリーが好きな人、性について考えてみたい人、ちょっと鬱な気分になりたい人は、読んでみてはいかがでしょう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-12-08 11:46:34] [修正:2009-12-08 11:46:34] [このレビューのURL]