「イケメン」さんのページ

いやあ面白いです。
つまらないギャグパートはさておき、喧嘩パートは素晴らしい!
(未読の方の誤解を避けるために書いておきますが、ギャグと本格格闘パートは完全に分離されていますので、シリアスな場面で変なギャグが入ったりとか、そういうことはありません。そのへんはきっちり分けられています)

主人公十兵衛のアタマを使った戦略の応酬はわれわれの脳髄から全身の血管、筋肉を疼かせてくれます。

ここでは何度も言及されているかと思いますが、17巻あたりから始まる金田戦はとても優れた出来です。金田戦までの闘いでは、格闘テクニックやフィジカル面では格上の相手を、なんでもありの「喧嘩」に長けた頭脳派で毒舌家の主人公十兵衛が、何度も危機に遭いながらも見事な策で形勢を逆転し、翻弄する、といった流れなのですが、金田戦は一味違います。

競技としての格闘技にとらわれてしまっていたり、圧倒的な身体能力に寄りかかっていたそれまでの十兵衛の相手とは異なり、金田は十兵衛と同じく「喧嘩」に長けた男なのです。「勝敗は畳の上だけで決まるものではない」と金田は言います。競技スポーツとしての格闘技へのアンチテーゼが含まれたその発言には十兵衛の「喧嘩」スタイルと相通じるものがあります。

その二人が全力でぶつかり合う、そこに金田戦の醍醐味があります。
試合前の十兵衛と金田とのレストランでのやりとりから既に二人の戦いは始まっていて、そこからラストまでの流れはまさにパーフェクト。

文句を言うとするならば、試合中の文字での説明がやや多いことと、せっかくの流れと盛り上がりを寸断してしまう説明があること、そして合い間にどうでもいいギャグパートが挟まれていることです。

作者自身CGを使っていて、あまり絵はうまくはない(ところどころ筋肉が異常にでかかったり、おかしいところがあります。人体とは思えないところもあります。しかしトーンなどで徹底的に影をつけたり、絵を濃くしているのでそれなりに見えるようになっています。おそらくアシスタントの功績でしょう)ので、下手に絵を描くことにためらいがあるのかもしれませんが、そこは絵で説明できるだろ、というところを長ったらしい文字で説明してしまったり、そこは漫画としてマイナス。それとやや表現がクドイところがあります。もうちょっと全体の流れを意識して欲しいかな。
ギャグパートは好きな人もいるかもしれませんが僕は正直なところ、その分格闘パートが見たかった…という恨めしい気持ちしか感じません。しかしこれも木多先生が格闘パートの質を向上させるためのやむを得ない時間稼ぎと考えれば、しかたあるまい。そういう理由で片づけてしまえるくらい、格闘パートはオモシロイのです。

三巻あたりから本格的に喧嘩が見れるので(一応1巻にも2巻にもギャグ抜きの格闘はあるが短い…)、興味のある方はそのへんまでガマンして読んでください。

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[投稿:2011-07-15 18:30:59] [修正:2011-07-15 18:30:59]