「!根こそぎ般若!」さんのページ

俺は「過去に囚われるな」、「済んだ事は仕方が無い」、
そのような、見ようによっては前向きな姿勢で生きてきた人間だ。だから戦争や人種や過去に起こった国際問題は一切深く掘り下げる気が起こらなかった。

戦争もそうだ。
しかし、この作品を読んで、「戦争」に関してはそのスタンスでスルーする事は愚かに思えた。今まで敬遠してきた故に無知な自分を恥じた。


夜おそくまっくろな血をはいた
そしてそれきり目も見えなくなった
だまって手を握る人がいた 知っている手だった
痛い
のどをまた生ぬるいかたまりが通ってくる
もうただの血ではなくて内臓の破片だと思う
うでは便器を持つのが精一杯
髪も抜けとるのかもしれんが触って確かめる気力も無い
あしたにしよう……あした…
嬉しい?
十年経ったけど 原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?
ひどいなあ てっきりわたしは死なずにすんだ人かと思ったのに
ああ 風… 夕凪が終わったんかねえ
この話は終わりません
何度夕凪が終わっても終わっていません


このわずか30ページに満たない物語を締めくくる文、
これを読んだ時、胸がざわついた。初めて味わった感情だった。
この物語の後、また月日が流れたサイドストーリーが収録されている。「済んだ事」で終わらせてはいけない所以がここにある。

俺はまだ二回しか読んでいない。
しかし、成長の節目節目で今後何度も読まなければならないのだろう。現時点で点数をつけるのが凄く戸惑うのだが、娯楽性は高くないという事で今は7点でまとめておこうと思う。

俺も含めて、想像力のねぇ糞ゆとり共に読ませてやりたい一作。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2007-08-31 00:12:27] [修正:2007-08-31 00:12:27]