大阪ハムレットのレビュー
9点 朔太さん
ヒューマンドラマを集めた短編集です。
テレビドラマ、映画をはじめ小説や漫画のヒューマン
ドラマには、哀しみとともに救いが無いと成立しないものです。
本作品は、哀しみやペーソスが主たるベーステイスト
なのですが、必ずしも救いが存在するわけでもなく、
良い人たちが作るドラマでもないのが特徴です。
その代わりに、“大阪テイスト”という
「転んでもただでは起きひんで」という精神、
したたかさが添え物に味付けされています。
独特の絵柄(私は描かれる美人が好きではないので
評価は高くないですが)と相まって、独特の大阪人間
ドラマが描かれています。
それを最初から狙って描かれたのは、タイトルを
見ても明らかであり、森下裕美さんがそれを
とても好きでそれを愛情をもって表現したいと
思っている気持ちがシッカリと伝わってきます。
それぞれの短編は珠玉のような輝きを放っており、
記憶に残る名作と言えます。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2020-04-13 16:42:09] [修正:2020-04-13 16:42:09] [このレビューのURL]
7点 kikiさん
父親が亡くなって49日もたってへんのに母親は新しい男を家にひっぱり
こんでいるという中学生。「女の子になりたい」宣言をクラスメートの
前でした小学生男子。15才なのに23才の彼女がいる中学生男子。
・・・など1巻辺りはまだ風変わりだけど、実際にありそうなシチュ
エーションのストーリーに大阪の子らは強いなぁとほんわか読めてました。
が、巻数を重ねるごとに大人の話が多くなってきて、ちょっと辛い話が
増えてきて人生ホンマ色々やなぁと悲哀の方が色濃くなってきたかな。
もちろん会話の掛け合いなど楽しくは読めるんだけど、読んでいて
胸の奥がギュっとつかまれる感ありです。
様々な人達の追い詰められ感がよく描写されていてすごい。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2012-03-04 01:17:49] [修正:2012-03-04 01:17:49] [このレビューのURL]
7点 hiroponさん
作者が吐いた毒とともに、心理が繊細に表現されている。
過去の「少年アシベ」を読んでも、この作者はアタリのきっつい人だな、と思った。
そんな作者の毒は、上っ面的なキャラクタの陰で行き場をなくしていたのでは…。
「少年ハムレット」の少年、少女たちには、取り繕った可愛さがない。
不細工、愚直でさえあるような気もする。
だからこそ、少年期のただ一途に思い、人を遠ざけ、悩む心情が、非常に素直に表現されている。
感情移入できるかどうかではなく、各短編の登場人物たちが本の中に、また日本のどこかにいるのではということを伝える。
作者にとってはおそらく、毒づきながらも、非常に多くの心情が吐露されている本だと思う。
キャラクタの心情の切り取り方の巧さとともに、色々な意味で向き合った作品なのかとも思うが、外れていないか。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2009-06-14 04:22:46] [修正:2009-06-14 23:28:07] [このレビューのURL]