あらすじ
「人の命は平等に価値がない」
そう断言し、圧倒的な力を持つモン。
そしてモンに魅かれ力を望むトシの2人は特に意味もなく爆弾テロを起こし、一般市民を虐殺していく。
あまりにも生々しい虐殺シーンは被害者の「痛み」がそのまま伝わってくる。
やがてトシは警察に捕らえられる。
その後モンは完全武装し警察署を襲撃。
2人は人質を取ったものの警察署の周りは完全に包囲されている。
その状況で要求を聞かれたトシは3つの要求をする
1 人の命の重さと値段の国家の公式見解
2 人を殺してはいけない理由
3 世に棲む生けとし生けるものすべてが、自由に平和に、平等に、美しく、明るく、楽しく暮らせる幸福と善意と優しさと愛に満ちた世界
この漫画のレビュー
10点 とんすけさん
志の高い作品である。
気弱でひ弱で、力を切望していただけの屈折した青年が、まさに鬼神のような殺人鬼に出会ったことで運命を絡めとられ、自身もいやおうなく大量殺人鬼へと変貌してゆく。
そして並行して現れる巨大生物。この異質な二つの主人公たちが、ゴミクズのように人を殺してゆく中で、おそれる人々、喝采を送るものたち、殺人鬼の親、総理大臣、アメリカ大統領、熊打ち名人、その存在を肯定し生を肯定したことで、孤立した彼ら2人に取り込まれて運命を共にする悲劇の女性が、様々に絡み合って、見たこともないスケールに物語は成長してゆく。
凄まじいドライブ感と綿密な描き込み、濃く深い台詞の数々があいまって、深みへ深みへと読み手を巻き込んでゆく。飛ばしているのにけしてかき飛ばしてはいない、この力量はどうだろう。
感嘆し、嫌悪し、疑問符に襲われ、深く頷き、そして感動、また嫌悪。
自分の中の様々な感情と言葉が次々引き出されていく快感と疲労を存分に味わわせてくれる。
漫画という表現文化にはこれほどの力があったのかと驚嘆させられた。過剰なほどの思想があり、そして時を止めるような詩情があり、何度も記憶に襲い掛かる「ゆるくない」ことばがある。
強引で残酷で美しい作品だ。
お勧めはしないが、漫画好きならぜひとも「読むべき作品」である事は間違いない。
それにしても、モンとマリアの連射ダンスシーンの美しさは、特筆に価する。
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[投稿:2006-09-25 23:37:28] [修正:2006-09-25 23:37:28]