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7.5点(レビュー数:8人)

作者中村明日美子

巻数2巻 (完結)

連載誌マンガ・エロティクス・エフ:2009年~ / 太田出版

更新時刻 2010-06-21 20:12:20

あらすじ 中村明日美子初のサイコ・サスペンス、戦慄の第1巻!

謎の死を遂げた美少女「藤乃朱」。
入れ替わるように、「朱」の双子の妹と名乗る少女「桜」が、作家・溝呂木の前に現れるも、彼女の正体は一切不明。
二人の点をつなぐ作家・溝呂木は、盗作に手を染め深い闇に追い詰められていく。
そして事件の謎を追う編集者と刑事たち。彼らの間を蠢く謎は深まるばかり――。
顔のない死体とひとつの小説をめぐる、謎の物語。

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この漫画のレビュー

8点 クランベリーさん

中村明日美子の耽美な傑作。

もう深くて暗くて重くて、書きたいことはいくらでもあるんだけど、それをどこまでも書いていくとこのサイトの字数制限(あるのかな?)に引っ掛かってしまうかもしれないのでやめときます。
以下、軽くネタバレありますのでご注意ください。

とにかくこの作品は耽美的。
皆さんのレビューにも必ずこの言葉が出てくるし、中村明日美子さん自身が「耽美」と、それと最も相性の良い言葉の一つである「退廃」とを念頭に置いてこの作品を描いたであろうことは想像に難くない。
中村明日美子さんは体調不良で一時期断筆していたことがあって、その時の心情も作品に取り込まれているのかな、とも思ったけど、この作品の1巻は休む前に出ているので考え過ぎかもしれない。

「耽美」以外では、藤乃朱の醸し出す「艶美」=黒と、コヨミちゃんの純真無垢な「健康美」=白との対比が印象的で面白かった。
作者は女の持ち得る美を二つに分けて、それぞれに惹かれていく男の様を描きたかったのかも。
でも正直その部分に関しては作者は描き足りなかったんじゃないかなとも思う。
不満を感じるほどでもないけど、この作者ならオセロのように黒白を引っくり返すぐらいのことは平気でやると思っていたので、最後までコヨミちゃんが純真無垢の白のままだったのは意外だったし拍子抜けした。
辻さんの役回りが中途半端だったのかな。もっとコヨミちゃんに溺れてくれれば。

溝呂木先生のキャラはとても良かった。その堕ちっぷりも含めて。平成の時代に明治の文豪のようなキャラを持ってきて、しかもそれが見事に成立しているところに作者の世界観の奥の深さを感じる。
この作品はサイコサスペンスという一応の骨格はあるんだけれども、結局は作者の思い描く美意識を享受し、共有し、美に耽る作品なのかもしれないな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-06-30 21:09:29] [修正:2012-06-30 21:16:22]

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