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8点(レビュー数:4人)

作者槇村さとる

巻数16巻 (完結)

連載誌YOUNG YOU:1993年~ / 集英社

更新時刻 2009-11-25 06:29:44

あらすじ ---

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この漫画のレビュー

8点 niveaさん

[ネタバレあり]

仕事に恋愛に悩む、コック志望の主人公・百恵を中心繰り広げられる長編漫画。お料理が題材ですが、あくまで「主人公が料理という仕事を通して成長して行く様」がテーマ。槙村さとる氏が描く長編ストーリーマンガはいつの時も、その都度キャラやテーマ、ストーリー展開こそ違えど、「少女が苦悩と葛藤の末に成長し自立する姿」がとても丁寧に描かれています。

最初は1話完結のお料理バトル漫画といった風でしたが、百恵が憧れ従事する天才シェフ・織田の恋人である可奈子が出て来るあたりから、恋愛ドラマの色がどんどんと濃くなっていきます。百恵の失恋というカタチでこの恋愛騒動がいったん収まると、次は百恵のライバルとなる日比野ミキの登場。仕事に関してプロフェッショナルな彼女の出現のおかげであやふやだった百恵の方向性がビシっと決まり、「仕事人」として少しずつ成長していきます。また、全編を通して迷いがちな主人公の尻を要所要所で叩き、ピリっと話を引き締める千代ばあの存在も爽快。

百恵が基本的に前向きであまり悩まないキャラ設定なのでどうしてものんびりムードのストーリー展開になってしまい途中たびたび話が停滞してしまうのですが、この可奈子・ミキ・千代ばあという3人の女性キャラに関わるごとに百恵が岐路に立たされ、そのおかげで話が前にぐいっと進みます。

残念なのは、中盤まではとても丁寧に描かれていたにも関わらず、話の結末の仕方があまりに急展開であっけなさすぎた事。広げすぎた風呂敷が収集つかずとりあえずバタバタと畳んだというような印象があります。また、それぞれのキャラが持つエピソードにリアリティがあまりなく、多々違和感を感じる部分も。このリアリティのなさこそが槙村マンガの特徴なのですが・・・。

このリアリティのなさを最も多く感じたのが、主人公である百恵。育ちが良くて明るく素直ないい子という設定なのですが、「いいコだからってそれは許されるのか?」と思うような、一般的には理解されにくいエピソードが満載です(例えば百恵と高橋との関係性等)。

また、最終的には織田と百恵が恋人同士になるのですが、それに至るまでの心情の変遷がどうにも描写不足。晴れて2人の気持ちが通じ合うシーンでは「え?なんでここでいきなり恋が実るの?」と違和感たっぷり。人は果たしてあのような会話で意思の疎通ができるものなのか。

織田というキャラが「孤独な天才肌の料理人」という特徴のみに終始しており、人となりや魅力が伝わりにくかったのも残念な部分です。どちらかと言えば織田と双肩をなす天才シェフ・高橋のほうが作者はお好きだったようで、ストーリー中盤までは高橋の人物像や才能などが他の誰よりも魅力的に、バックのお花・ページ数共にたっぷりと描かれています。ですが終盤では織田の恋人・可奈子の活躍(?)に押され、残念ながら高橋は蚊帳の外。

この可奈子、美貌と才能に恵まれているにも関わらず不幸癖があるというか、とにかく苦悩と煩悩に満ちた人で、この漫画の中ではいわば悪役的な部分を担っています。ですが他のキャラが浮世離れしている分だけ余計にリアリティあり、共感しやすい人物像だったように思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-07-11 05:59:23] [修正:2014-07-11 05:59:23]

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