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7点(レビュー数:3人)

作者中村明日美子

巻数1巻 (完結)

連載誌短編集:2011年~ / 白泉社

更新時刻 2012-01-14 13:43:00

あらすじ …乗り換えませんかこっちの電車は山に行きますけどあっちの電車は海に出ますよ。

備考 短編集のため連載開始年には発行年を記載。

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この漫画のレビュー

8点 booさん

 中村明日美子といえば自分の中ではどちらかというとBL作家のイメージがありまして。一般向けも描いているのは知ってはいたのだけれども、「同級生」がBL界隈で絶賛というのをけっこうな場所で聞いていたのが大きかった(だってぷっすまでも見た記憶が…)。というわけで去年この鉄道少女漫画を読んだのが初中村明日美子。

 読んでみてまず思ったのは、上手すぎる!ってことで。こういうテーマを縛っちゃった短編集は話がなかなか広がらなかったり、もしくはテーマを意識しすぎて話に無理やり感が出ちゃったり、この話…じゃなくても良くね?とかなかなか難しいものがあると思う。
 鉄道少女漫画はその名の通り、鉄道+少女漫画なのだけれども、このおもしろさはどちらを抜いても絶対成り立たない。まさに少女漫画という、青春大爆発な感じや現実にはありえない夢物語のような話が、鉄道特有の独特な雰囲気でぐっと引き締まる。両立しえないものがしてしまったという驚きがあった。

 短編一つ一つの構成の上手さもまた際立っていて。第一話のスリの少女がスリを仕掛けた相手に捕まって…に代表されるように、突拍子のない冒頭から始まり、見事な伏線回収を挟みつつ、心をぐっと掴まれる美しいラストに帰結する。
 鉄道の使い方もどれ一つとして似たようなものはないもんなぁ。時刻表トリックや鉄道に絡めたウィットに富んだやり取りというのも何とも素敵で、またそんな鉄道愛を感じさせる要素もしっかりお話の中の必要なものとして組み込まれている。表紙やエピローグまで隙がない。稚気に溢れた仕掛けを眺めていると、ついついにやってなっちゃうのだ。

 どの短編も素晴らしいのだけれど、特にお気に入りを挙げるとしたら「浪漫避行にのっとって」「立体交差の駅」「木曜日のサバラン」あたり。
 「浪漫避行にのっとって」は特に構成が抜群で、最後のカタルシスがものすごい。全体的にコミカルな感じも好き。「立体交差の駅」は青い花以来、久しぶりにぐっときた百合もの。すんごく可愛くてぎゅっとしたくなる。「木曜日のサバラン」の共通幻想というか、言葉に出したら壊れちゃいそうな雰囲気と仲間って良いよなぁ。

 ということで中村明日美子のすごさというのを存分に感じられた短編集でした。本当に活動再開してくれてありがたや。短編集好きの人には外さないと思うのでおすすめ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-02-08 18:34:25] [修正:2012-02-13 00:16:17]

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