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5.2点(レビュー数:10人)

作者武井宏之

巻数1巻 (完結)

連載誌週刊少年ジャンプ:2007年~ / 集英社

更新時刻 2010-10-11 15:11:33

あらすじ 大工事時代―それは世界を襲った大災害から復興を目指す熱き工事戦士達の時代。そんな時代の中、ドヴォークの工事戦士・バルはゲンバー帝国の大王に襲われて命を落とす。だが次に目覚めた彼は重機人間となり!?

備考 連載終了後、『ウルトラジャンプ』にてリメイク作品『ユンボル-JUMBOR-』が連載開始。また、それに伴い復刻版である『安全版』(全2巻)が発売された。

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重機人間ユンボルのレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全10 件

5点 景清さん

 数年前、本作『重機人間ユンボル』の第1話を週刊少年ジャンプ誌上で読んだ時のあの高揚感は今でも鮮烈に憶えている。元々作者である武井宏之のファンという訳ではなく、『仏ゾーン』も『シャーマンキング』も真面目に読んだことはあまり無かったが、『ユンボル』には新鮮さと懐かしさが入り交じり、なおかつ現代的な洒落っ気を加えてさらに一捻りさせたような独特な面白さがあったのだ。
 昔は少年誌で多く見られたが現在はあまりお目にかかれないジャンルに、ロボットやサイボーグなどメカの魅力を前面に出すSFアクションがある。テレビアニメの世界にしても昔は多かった子供向けのロボットアニメも現在はめっきり減ってしまった。そういうご時世だからこそ、メカの魅力を再発掘しようとした本作の登場は非常に新鮮だったし、ショベルカーやクレーン車などの「はたらくじどうしゃ」が大好きだった幼少期の懐かしさも相まって、それこそ子供のように胸が高鳴った。

 『重機人間ユンボル』というタイトルにもある通り、本作の世界観やデザインのコンセプトは「土木工事」と「重機」のイメージで統一されている。一般的なメカアクション漫画との最大の違いはそこだろう。大災害により崩壊しつくされた世界で、それでも再建を願う人々により“世界の工事”(再建)が進められる大工事時代を舞台に、ショベルカーやドリルなど重機の力を身にまとった改造人間ユンボル(語源は無論ユンボ)達の戦いを描いたSFファンタジーアクション超大作!
 …なんか「微妙にカッコ悪い」と思う人もいるだろう。ごく自然な反応である。土木工事というと“臭い”“汚い”“きつい”のいわゆる3K職業の象徴だし、近年のエコ熱の高まりから、山を崩したり森を切り開いたりといった土木工事は環境破壊の象徴のように捉えられることが(漫画世界においても)多かった。
 では本作においてはというと、土木工事とは世界の再建を担う聖戦であり、人と自然を結びつける象徴として再定義される。まさに災厄に立ち向かう人の意思の強さの表れそのものとなったのだ。今にも中島みゆきの「地上の星」が聴こえてきそうな超解釈である。
 土木工事に付いて回る泥臭くて野暮ったいイメージも一種のギャグとしてネーミングに活用され、上述の「ユンボル」をはじめ、「ドヴォーク(土木)国」「首都ツメシオ(詰所)」、「ゲンバー(現場)大王」、人類復興の鍵を握る無限エネルギーを秘めた「ユデン(油田)の薗」などなど、ギャグっぽいが逆に感心するようなネーミング・設定が続出して土木工事というモチーフをネタ的にもストーリー的にもうまく処理することに成功したのだ。ああ、格好悪いことはなんと格好いいのだろう。
 極めつけはユンボル達の操る戦闘術「工法(クンポー)」だ。まるで動物の動きを模した中国拳法の形意拳のように、「ショベルのかまえ」「ブレードのかまえ」「シールドのかまえ」と現実の重機をイメージした戦闘術。ここにきてメカと土木工事は、格闘技やファンタジーとさえ融合を見せた。子供の頃、工事現場で働く重機達を飽きずに眺め続けた時に感じたあのプリミティブなかっこよさが、あまりにも意外な形で復活したため、もう本作には本当にメロメロになった。メカデザインの充実っぷりや戦闘シーンの派手な演出からも作者の気合は存分に感じられ、応援せずにはいられなかったのである。

 だ、が、結果的には無念の10週打ち切りでOWATTE SHIMATTA……

 いや、思い当たるフシは色々とあるのだ。戦闘シーンの演出が大振りすぎて何が起こってるのかよく伝わらないとか、いくらショタキャラが人気だからって、主人公を大人の心を持った5歳児にしたのはやり過ぎだろうとか、ネーミングをはじめセンスがぶっ飛びすぎて大方の読者を置いてけぼりにしたのではとか、近頃の少年少女には「はたらくじどうしゃ」の魅力が昔ほどは感じられなくなってるのかも知れんとか。徐々に掲載位置が後退していく様をハラハラ見守りながら、色々と不穏な思いが交錯したりしたのだ。なんかすごい勢いで設定解説が始まった連載後半に悪い予感は更に高まり、そして遂に現場主義のラスボスのゲンバー大王が主人公一行の前に登場→粉砕!俺達の戦いはここからだぁ、蜜柑!もうペンペン草も生えないほどの見事な打ち切りっぷり。

 決して悪い作品ではなかった。ジャンプ編集部にもう少し長期的な展望があればあるいは、という気持ちは今もある。だが、紙面に貢献した人気作家といえども人気投票結果が芳しくなければ即打ち切りというスタンスを徹底したまでの事だろう。それについてはもう何も言うまい。
 その後、10週打ち切りにしては妙に分厚い単行本が出版された。巻頭の作者コメント、空きページで語られるコラム、そして巻末に半ばヤケクソのように掲載された異様に気合の入った設定資料集、涙なくして読めぬあとがき、単行本全体から立ち上る力走感とも怨念ともつかない妙な迫力に気圧され、気がついたら2冊買ってしまった。

 設計計画は堅牢でも、クライアントの圧力から予期せぬ工期短縮を強いられた未完成施工品ゆえに高い点数とはならないが、決して結果的な完成度のみからは推し量れない週刊連載漫画というリアルテイム性の強いジャンルゆえの様々な重みが、今でも忘れがたく残っている。最近ウルトラジャンプ誌上において続編が始まったと聞いた。ぜひ今度こそは長期的な工事計画に基づいてやり遂げて欲しい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-11-29 00:23:59] [修正:2010-11-29 00:30:34] [このレビューのURL]

7点 白い肉球さん

シャーマンキングの蜜柑から構想2年
武井先生の新作は読者の予想ではなく、視線の斜め上を行ってたように思う(自分は大好きだったけど)。

まず、工事という泥臭い基盤がとっつきにくい。最初のカラーページにドカタのオッサン沢山ってのは読者層の少年にとっては憧れもしないし親近感も沸かないだろう。ってか実際沸かなかった。
ストーリーや世界観も独特ではあったが、技も同じで一目見て「カッコイイ」と思えない雰囲気だったのもマイナスだったと思う。
そして戦闘シーンが若干見にくい。腕がショベルやドリルになってる図に慣れないせいかもしれないが、アクションシーンが見にくいのは少年漫画としては致命的だと思う。

でも相変わらずロボはかっこいいし、武井先生独特なノリも健在。
なによりたった10話で打ち切られたのに、しっかりと熱くなれて、読後感良いが凄い(当時はプリンセスゲンバーとかやるのかと本気でビビってました)。

現在UJでパラレルワールドの連載が行われている事から分かる様に、この作品は読者層を間違えた作品でした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-20 01:23:44] [修正:2010-09-17 23:41:27] [このレビューのURL]

5点 二軍Tシャツさん

まぁ小中学生には取っ付きにくかったんだろうなぁ…

やたら練られた物語の設定、世界観は物凄く好みです。
ただ…なんか読みづらい。
衝撃波(?)が多くて、どんな構図なのか分かりにくかった。

作者の味が出過ぎてたためか、あまりに毒性の高い漫画になってしまった感がある。


用意周到に下準備してきた作品が消化不良で消えてしまうのは、作者共々読者も辛いわなぁ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-03-15 15:26:21] [修正:2009-03-15 15:26:21] [このレビューのURL]

3点 たにやんさん

この作者の作品はどれも好きではないんですが、
確かに打ち切りは早すぎな気がしました。

世界観や、物語の設定にかなり気合いを入れてたのもうかがえ、
もう少し様子を見るべきだったと思いますね。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-08 22:41:08] [修正:2008-02-08 22:41:08] [このレビューのURL]

5点 a6a6さん

10週で終わったにしてもきちんと世界観を成り立たせてたのは、
巻末のおまけを見てても気合入れてたんだろうなって感じた。
だが寒い駄洒落を多用したり、作者の性的嗜好が丸出しなのは見てて抵抗を覚えた。
バトルが見にくすぎるのもマイナス。
なかなか面白いけど、なんで打ち切り?という疑問は一切持てない漫画だった。
話が片付いてないので、一番面白い一話だけ見れば、あとはわりとどうでもいいような気がしなくも無い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-09-02 22:02:07] [修正:2007-09-02 22:02:07] [このレビューのURL]

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