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8点(レビュー数:3人)

作者くらもちふさこ

巻数3巻 (休載中)

連載誌コーラス:2005年~ / 集英社

更新時刻 2009-11-25 00:45:41

あらすじ 「そうか ボクはきみを好きだったんだね」 「不幸ごっこしてたの」 「はじめてだっつうのに懐かしく思えてくるに……」 すれ違う人々、重なる景色、駅から5分、花染町――
交通事故で記憶をなくした少年、両親の離婚の危機に胸を痛める幼い少女、インターネットの掲示板のやり取りで一喜一憂する少女。花染町を舞台に年齢も立場も様々な人物が登場し、それぞれの物語が交錯していくオムニバスストーリー。
 

備考 不定期に連載されていたが、本作のスピンオフ作品「花に染む」の連載のために一時中断されている。
 

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駅から5分のレビュー

点数別:
1件~ 3件を表示/全3 件

8点 booさん

駅から5分の町、花染町を舞台に描かれる連作短編集。色んな意味で超濃密。
やはりくらもちふさこはすげぇーよ、と思わせてくれる。いや、技巧的な意味だけではなくね。

連作短編集ということで、短編によって主役は異なる。ある短編では主役でも、他の短編では脇役だったり、脇役とも言えない端役だったり、短編によって視点と人間関係はどんどん変化する。例えば知人や友人という直接的なものから落し物を拾った程度の些細なものまで色んな形があるし、もちろん登場しないことだってある。

別にこの技法はくらもちふさこのオリジナルというわけではなくて、映画や小説、時に漫画でも同様の技法が使われているものはけっこうある。陰日向に咲くなんてまだ記憶に新しい人も多いだろう。
しかし、くらもちふさこの凄さはこの複雑な技法を完璧に使いこなしている所。短編を一つ読むと、この人はこんな感じなんだなと考える。しかし読んでいくうちに、視点が変わるうちにどんどん色んなキャラクターの印象が変わっていく。まるで万華鏡のように見る角度によって色んな人の違う面を見せてくれる。1巻、2巻、3巻、そして読み直すごとにそれはどんどん深化して、変化が止まることはない。

本当に刺激的な漫画体験。読めば読むほどにおもしろい。
くらもちふさこは別にみんなが主役、なんて言いたいわけではなくて、一人の人間を掘り下げて描くためには一つの視点では足りないと考えただけだと思う。私がイメージしたのは連立方程式の、あの2つの式で一つの点が決まる感覚。もちろん人間はそんなに単純じゃないから絶対的にこういう人だ、と決まることはない。でもその点に近づいていく感覚が楽しいのだ。

一つ一つの短編を見ても十分おもしろい。やはりくらもちふさこが描く妄想劇は気づかぬうちに引きずり込まれてしまう。共感するというかもう本当にそのキャラクターの内面に引きずり込まれる感じ。
表現技法も相変らず新しいというか、すごいわ。文字や言葉に頼らない濃密な心理描写は相も変わらず見事の一言だけど、インターネット掲示板のイメージとかおもしろいよね。

実験的なために人は選ぶかもしれないが、くらもちふさこが天才と言われる理由を肌で感じられる作品。読むとひどく疲れるくらいに。
ちなみにスピンオフの「花に染む」の連載のために現在駅から5分は休載中。セットで読むとより理解が深まると思うのでおすすめです。あちらも同じくらいおもしろいし、やっぱりくらもちふさこはすごいな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-07-18 01:28:47] [修正:2011-10-03 17:47:33] [このレビューのURL]

8点 とろっちさん

天才・くらもちふさこが描く群像劇。

全く無関係に思える人々、いくつものエピソードが、実はそれぞれ繋がり、複雑に絡み合った、
オムニバス形式の作品です。 一昔前の映画なんかによくあった手法だと思います。

この作品に特定の主役はいないです。
敢えて言うなら、出てくる人みんなが主役。
ある話では脇役だった人が別の話では主役になり、そこで脇役だった人がまた別の話で、という形式。
ほんの一瞬出てきただけの脇役なのに強烈なインパクトがあったりするのも、作者の技術でしょうね。
セリフ少なめなのに濃厚な心理描写、濃いキャラクターたち。 こういうのが作者の腕の見せ所。

一話一話の質の高さにも驚かされますが、それぞれの話の絡み合い方なんかは
もうこの人にしか描けないだろうなとも思えるほどの凄みを感じさせられます。
人と人とは皆つながっているんだよ、そしてそのつながりにはちゃんと意味があるんだよ、ということ。
パッと見は特段なにもない普通の描写ですが、話と話とがリンクするその瞬間が色鮮やかになるような、
そんな不思議な感覚に支配されます。

この人の作品は、何の変哲もない日常話の中に、とんでもない仕掛けとか技巧を凝らした表現を
これでもかっていうぐらいに入れてくるので、何かもうその描写に圧倒されてしまいます。
天然コケッコーが郷愁を感じさせる中で相反するような技巧に何度も唸らせられるような作品なら、
こちらは物語全体の構成の巧みさと見せ方に何度も溜息をつかせられるような作品。
経験というよりは才能なのかなあ。 天才と謳われる凄さなのでしょう。
あまり気軽に天才なんて言葉を使いたくはないんですが、くらもち氏をそう評する人が多いのも納得。

で、べた褒めなのに8点なのは、作品全体としての話にいま一つまとまりがないと思うから。
映画「マグノリア」みたいに知らないうちにみんなが同じ方向を向いているのならまだしも、
まだこの作品は登場人物みんながそれぞれてんでバラバラな方向を向いているように感じます。
ただのオムニバスよりも、一つの作品としての見せ方に期待を込めて、この点数。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-03-31 01:11:07] [修正:2011-03-31 01:14:15] [このレビューのURL]

8点 canさん

くらもちふさこさんが天才と言われる理由が、今さらながらわかった気がします。
どこかミステリーの要素を含んだ少女漫画です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-02-08 20:32:56] [修正:2010-01-21 01:17:36] [このレビューのURL]


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