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9.5点(レビュー数:2人)

作者内田善美

巻数3巻 (完結)

連載誌ぶ〜け:1982年~ / 集英社

更新時刻 2009-11-25 00:47:01

あらすじ 「幽霊になった男の話をしようと思う」
男は同じ夢を見る。そこに出てくるのはいつも、訪れたことのない家と、会ったことのない少女。
旅から戻ったウラジーミルの目にうつったのは、はるかな夢に囚われた男・ヒューの奇妙な生活だった…。
 

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星の時計のLiddellのレビュー

点数別:
1件~ 2件を表示/全2 件

9点 とろっちさん

少女漫画の1つの頂点であり到達点。

幽霊になった男。 夢の中で出会った少女。
夢に囚われた青年が、無限の時空を航行するがごとく、現と虚とを行き来する。
自分が少女の夢を見ているのか、それとも自分は少女が見ている夢の登場人物にすぎないのか。
どこまでが夢なのか。 どちらの世界が現で、どちらが虚なのか。
現と虚。 ただし彼にとってそれはさほど大したことではないのかもしれない。

透明感のある水彩画のようなモノクロページと、異常な程の質感を表現した油絵のようなカラーページ。
耽美的とも思えてしまう驚異的な筆致がミステリアスなストーリーと溶け合って生まれた夢幻の世界。

これぞまさに芸術の域。


これは本来なら文句無しに10点をつけるべき作品なんだろうなと思わされます。
そのぐらいにこの作品のレベルは凡百の作品と比べて突出しています。
主人公の内省とその考証が作品の核ですが、ほぼそれだけでこれほどの作品ができるとは。
作者の構想力と自己表現力が恐ろしく優れているのでしょう。 手放しで賞賛せざるを得ないです。

しかしながら苦渋の選択で9点に留めました。
なぜかと言えば、漫画においてもう1つ大切なこと、「読み手に伝える」という観点において、
残念ながらこの作品にはそれが欠けている(或いは最初から度外視している)と感じてしまったので。
その部分で-1。 もう好みの問題だと思ってください。 この作品が圧倒的に凄いことは断言できます。

思えば、この作者は唯一無二の作り手ではあるものの、それと同じレベルの語り手にまでは
なり得なかったということなのかもしれません。
それもまた往々にして芸術なる哉。 真の芸術は理解の高みにあるということなのでしょうか。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-01-25 00:56:51] [修正:2011-01-25 01:16:12] [このレビューのURL]

10点 torinokidさん

緻密なストーリー展開、芸術ともいえる描写。
面白いというよりも物凄い作品と言えよう。

ヒューの夢を媒介に過去と現在の様々な事象が抒情的に語られる。
各所に出てくる心理学をはじめとした学術的な描写も説得力がある。

本当は10点以上付けたいところ。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2010-12-05 23:32:46] [修正:2010-12-05 23:32:46] [このレビューのURL]


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