ジパング少年のレビュー
5点 asd5さん
本題に入るまでが長い! じれったくとも、4巻までは読み進めないと話が始まりません。
しかもまた本題に入ってからも長い!(笑) 実際に本題が動き出すのは6巻から。
そこからはなかなかの冒険活劇です。最後、理屈っぽい終わり方になってしまったのが残念。
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[投稿:2013-09-09 19:55:43] [修正:2013-09-09 19:55:43] [このレビューのURL]
6点 kikiさん
色々なことが詰まっている作品だと思います。
基本は主人公柴田ハルくんの成長物語だと思います。
最初の校則問題うんぬんは今の時代では考えられない程の厳しさで
(ってか夜に生徒の家に奇襲をかけてくるって先生達の労働時間は
どうなってるのか?今なら頭オカシイんじゃないのってぐらいの
熱心さです)、あの時代に学生だった人達には共感と懐かしさが
生じます。ってかあそこまで厳しい高校ってあったの?
校則問題から始まって、TV業界で少しもまれ、ペルーに渡り、ペルーで
砂金とりをし、マフィヤとも揉め、そして運命のエルドラドへと
高校生が2年弱で怒涛の体験をしていくのは面白いです。
そして様々な体験や、人からの言葉によって自分の価値観を激しく
ゆさぶられ、徐々に成長していくハル。
なんていいうか大人になって読むとハルには「親のこともちゃんと
考えろよ」とか「状況ちゃんとみてる?」とか色々言いたくなっ
ちゃうんだけど、思春期のおさまりきらない感情をよく描けていると
思います。
最後のエルドラドのエピソードは、あんなに正夢やデジャブとかで
導かれてたにしては壮大さにやや欠け、ハルが導かれた理由が
明らかにされなかったのは残念かな。
ピメンタ畑の笹山さんとの会話の方がズッシリときました。
ペルーでの日系人の現実(20年前の話だから変わってはいるで
しょうけど)を知ることができて興味深かったです。
個人的にはペルーがこんなにドーンと舞台になった漫画ってないと
思うので、ペルー好きならオススメ。
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[投稿:2012-08-16 15:47:34] [修正:2012-08-22 01:35:07] [このレビューのURL]
10点 B・Aさん
●人は誰でも人生に深く影響を与えてくれた作品を持ってると思います。
それはきっと奇跡のような出合いであって、たとえどんなにいい話だとしても出合うタイミングが悪ければそうはならないだろうし、逆にどんなにくだらない話でも、その人にとっては宝物になることだってありえるのです。
この『ジパング少年』は、僕にとって奇跡のようなタイミングで出合った宝物のようなマンガです。
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この物語は4人の少年少女によって紡がれていきます。
皆がそれぞれ抱えているのは漠然とした違和感です。
徹底的に管理された学校。当たり前のように竹刀で殴られ、それが教育なのだと信じて疑わない教師たち。陰湿ないじめをしていたくせに停学になることだけは避けようと被害者ぶる同級生。そしてそれが認められてしまう不条理な世界。
そうした、本当は誰しも多少なりとも感じている違和感を、目一杯エネルギーに換えてひた走る、まるで暴走列車のようなお話のマンガです。
まるでそれが唯一の武器であるかのように、目に見える不条理すべてに噛み付く主人公柴田ハル。ある意味痛快ではありますが、とても危なっかしくも見えます。そんな柴田ハルにあるおじいさんは言うのです。
「世の中には2つの自由がある。“与えられた自由”の『フリー』と“掴み取る自由”の『リバティー』だよ。」
それを言われた柴田ハルはよく意味を理解出来ません。当時読んでいた僕も理解出来ませんでしたし、多分今も理解出来ていません(笑)。
ただ彼はその言葉を携えてペルーに飛んでいくのです。
ペルーは当時も今も貧しい国です。ほとんどの人が生きていくことだけで精一杯で、その国の人にとってみたら『学校の校則が厳しいから退学してこの国へ来た』なんて言ってみても誰一人理解してはくれません。彼らにとっては学校へ行くこと自体が憧れでもあるわけですから。
そんな現実に圧倒されながら彼らは想像を絶する体験をします。
学校を作るため資金集めに来た金堀り(ガリンペイロ)では、同業者に狙われたりしますし、反政府ゲリラに捕まったり、ポロロッカ(河の逆流)に攫われたり、何度も生命の危機に遭遇することになります。
しかし、それでも彼らは噛み付くのです。「それはおかしい」と。
ある時は日本の最新情報の事にしか興味のない、ペルーの日本人学校の生徒へ。ある時は視聴率以外には興味の無いジャーナリストへ。そしてある時は日本へ出稼ぎへ行って、妻を日本に殺されたと日本人を恨んでいる男に対して。
「それはおかしい」と。
主人公柴田ハルは、まるで運命に導かれるようにしてペルーのビトコス(黄金卿)を目指します。しかし多大な犠牲を払った末にたどり着いたそこには、彼が求めているような答えはありませんでした。
そこではたと気づくのです。『では一体何を求めていたのか?』と。
彼らにとってガマンならなかった『与えられた自由』とはなんだったのか。
そして長い旅を経て得た『掴み取った自由』とはなんだったのか。
それは漫画の中では明確には語られていません。
でもだからこそ魅力的だと思えるのです。
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僕にとってこの物語が特別なのは、柴田ハルが抱えていた怒りに賛同したからでも、社会に対して少なからず不満があったからでも、こんな風に生きたいと思ったからではありません(もちろんどれも共感は出来ましたが)。
ではなぜ特別なのかといえば『読者に対しての語りかけ』が切実に感じられたからに他なりません。
彼(作者いわしげ孝)は真剣に語りかけていたのです。日本人であることの違和感、矛盾だらけの社会、人としてどう生きるべきなのか。
そして掴み取る自由とは何を指すのか。
だからこそ、どんなに青臭いことを話していても、時代環境に合わなくなってきていても、その内容を読み返すたびに瑞々しい気持ちになるんだと思います。
ちなみに僕にとってあまりにも大事な作品であるために、読みなれることで感動が薄れてしまわないようにあんまり簡単に読まなかったりしています。
本末転倒とはこのことですね(笑)。
最後に。
このジパング少年(ボーイ)というタイトル、とても興味深いです。
直訳すると『日本の少年』。まさに日本人の今(当時)抱えている問題(イジメ、管理教育など)を提起している訳です。
そして発音は『ジパングボーイ』。これは外からみた日本人をあらわしています。この物語のほとんどが『日本人であることについて』語られているのです。
ではなぜ『ジャパン』ではなく『ジパング』だったのか。
これはマルコ・ポーロ『東方見聞録』からの引用で、日本は黄金卿だと言われていたところから来ています。つまり主人公は『日本の黄金卿』からペルーの『黄金卿』へ行った訳です。
もっともっと言えば、日本が黄金卿なのは事実なのです。少なくてもペルーの人にとっては。
日本の黄金卿からペルーの黄金卿へ。それはまるで先ほどの自由の話とも被ったりするのです。
与えられた山ほどある自由から、掴み取る数少ない本物の自由を得るというお話。
今回読み返してみて、なんとなくそんな感じがしました。
もし誰かがこれを機会に読んでみて、それで好きになってもらえたら光栄です。
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[投稿:2010-06-19 22:57:01] [修正:2010-06-19 22:59:03] [このレビューのURL]