ホーム > 不明 > 海外作品 > バットマン:ロング・ハロウィーン

6点(レビュー数:3人)

作者ティム・セイル

原作ジェフ・ローブ

巻数2巻 (完結)

連載誌海外作品:1996年~ / ヴィレッジブックス

更新時刻 2011-09-02 20:28:26

あらすじ 犯罪渦巻くゴッサムシティに降り立った闇夜の騎士バットマン。あらゆる権力を腐敗させ私腹を肥やしてきた組織犯罪のボス達にとって、買収など及びもつかないクライムファイター、バットマンの登場は、予想だにしない脅威だった。“スーパー”ヒーローの誕生で変わり行くゴッサム。しかしその一方では、バットマンの登場に応えるかのように、新たな種類の悪がゴッサムに跋扈し始めていたのである。バットマン史上に残る名作『バットマン:イヤーワン』の続編にして、屈指のミステリー大作『バットマン:ロング・ハロウィーン』が待望の邦訳!ハロウィーンの夜に始まった謎の連続殺人事件。真相を暴かんと共に立ち上がったバットマン、ゴッサム市警の警部ジェームズ・ゴードン、地方検事ハービー・デントの三人は、深まり行くゴッサムの、そして己の闇に何を見るのか。

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バットマン:ロング・ハロウィーンのレビュー

点数別:
1件~ 3件を表示/全3 件

2点 Scroogeさん

ゴッサムシティで記念日ごとに人を殺す殺人鬼ホリデイは誰か?
ハードボイルド探偵小説のようなバットマンコミック。
は、良いのだが、漫画としての可読性が低すぎる。

誰に対し何を表現しようとしてるのかが不明で、全編を通し首尾一貫しない。
派手なキメゴマの多用は食い違いの違和感を助長し、読む側の徒労感をいや増す。
瑣末なエピソードがやたら多いのもマイナス。
苦労して小さな文字を読んでも作品の理解の助けにならず、
キャラクターへの感情移入を強めもしない。
バットマンとキャットウーマンの恋の鞘当てなどどうでもいい。

クライマックスも酷い。
ホリデイの正体はひねりがない上に、バットマンによる看破でなく本人が自ら登場してしまう。
何のために正体を隠していたのか。
さらに記念日と殺人に全く関係がないと来ては、根本的に貧しい作品と言わざるを得ない。

バットマンシリーズに長く親しみ、キャラクターの人格設定や背景、動機付けなどを熟知した読者なら(詰まらないなりにも)読むことは可能だろう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-10-03 14:43:28] [修正:2011-10-03 14:52:59] [このレビューのURL]

9点 booさん

 ロング・ハロウィーンはバットマンコミックの中でも90年代最高傑作とされる。映画好きの方ならノーランのダークナイトの原案となったと言った方が分かってもらえるかもしれない。
 そんな傑作にも関わらず、残念ながら上巻は絶版となっている。今年ノーランの手がけるバットマン最終章が公開されるということで再刊されそうではあるのかな。しかしプレ値を抜きにしても上下で7000円弱は高い。私は原書で読んだのだけれど、英語は比較的易しいし1800円と安いので選択旨に考えても良いかもしれない。
 
 本作はゴッサムシティに突如現れた謎の殺人鬼ホリデイの正体を巡るミステリーであり、フランク・ミラーのイヤーワンの後を引き継いだバットマン二年目のファルコーネファミリーの終焉の物語でもあり、またハービー・デントの失墜とトゥーフェイスの誕生譚でもある。
 ロングハロウィーン以前のバットマン二年目の話としてイヤーツーがあったが、こちらはロンハロの刊行とその後のイベントによってほぼ無かったことになってしまったそうで。

 ロングハロウィーンはまるでチャンドラーのような、ハードボイルド探偵小説の趣きを持ったバットマンコミックだ。まあバットマンはそもそも“闇夜の探偵”なんて言われるように、そういう面は強いシリーズなのだけれども。
 しかしこの作品はチャンドラーの名前を出したくなるくらいに素晴らしかった。「長いお別れ」を髣髴とさせる驚きの結末が待っていて、なおかつその結末は読み手を否が応にも感傷にひたらせる。

 単なるミステリーとして見てはちょっと楽しめないかもしれない。結局ホリデイが誰であったかということに完全な論理的解決は恐らく不可能だ。読者しか分からない材料が推理のヒントとなっている上に、殺害の手際やそれが露見しなかったのも偶然性が大きくリアリスティックに欠ける。祝日という制約が大きかったというのもあるだろう。しかしこの作品の見るべきところはそこではなくて…。

 ロングハロウィーンのテーマは恐らく“信頼”だと思う。ハービーを信じられるのか? ゴッサム・シティを、ゴッサムの住人が変われると信じられるのか? それはバットマンの自身への問いかけであり、かつ読者への問いかけでもある。そして各々の“信頼”がホリデイの真相を決めるのだ。
 これは本当にすごいと思った。重要なのはミステリーとしての真相じゃなくて、それぞれの思いが真相を決めること。ミステリーと物語がここまで完璧に融合した作品ってなかなかないよ。だからこそバットマンは信じたんだよなぁ。信じなければもはやバットマンではありえなかったのだ。でもそれはバットマンにとっての真実であって、読者にとっての真実ではない。どこまでハービーを、人間を信じるのか…。ホリデイの正体はミステリーの枠を超え、私達読む側がどこまで人間を信じられるかという人類の普遍的な問いかけにつながってくる。
 
 ハードボイルドをここまで引き上げたミステリーというのはやっぱりチャンドラーの作品以外に思いつかない。バットマン、ゴードン、そしてハービーの三人の屋上で結んだ絆は悲劇に終わり、三人はそれぞれの道を選ぶ。何度読んでも泣かずにはいられない。
 続編としては邦訳済みの「バットマン:ダークビクトリー」と未邦訳だが「Catwoman: When in Rome」がある。ロングハロウィーンだけでは分からなかった部分も多いので、ロンハロを気に入った方はこちらもぜひぜひ。

追記
Catwoman: When in Rome はまだ発売日未定ですが、小プロより刊行が決まったそうです。喜ばしきこと…なのだろうけど、原書読んだ直後にこのニュースを聞いたので複雑な気持ちなのであります。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-01-24 01:18:04] [修正:2012-02-18 16:43:36] [このレビューのURL]

7点 columbo87さん

ノーランのダークナイトの原点となった作品。
イヤーワンの後にあたるストーリーで、ファルコーネファミリーの回りで起こる、「ホリデイ」による殺人事件に、バットマンやゴードン、デントらやり方は違えどもゴッサムを信じるものたちが挑む。
重厚な空気感の中で語られるゴシックミステリーといった面持ちであり、いわば推理小説をバットマンと言うプラットフォームを用いて視覚化したものである。見事なのはその構築、世界観の融合の妙であり、仮装男やフリークスらの存在という、ともすればナンセンスギャグとなってしまいそうなものを逼迫した緊張感で繋ぎ止めている点である。
本作は明らかに子供向けの作品ではなく、(バットマンの文脈をある程度とらえている)上の世代まで読むに耐える内容となっている。
主軸はデントとバットマンにおいて語られ、最後には皆が知るように悲劇を迎える。
それだけに冒頭から独白的に語られるブルースの言葉がなんとも切なく胸に残る。ブルースはゴッサムを、デントを信じていた。いや、今でも信じているのだ。それゆえ彼は今作でらしからぬミスをおかすのである。

決して勧善懲悪的な読後感を得られるわけではないが、名作と呼ばれるに値する幕引きと謎とを我々に与えてくれる。



ただ上下巻で6700円は高すぎやしませんか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-20 15:14:22] [修正:2011-09-20 15:26:27] [このレビューのURL]


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