「サアベドラ」さんのページ

総レビュー数: 4レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年05月02日

さすが寄生獣の岩明均。物語、構成ともに素晴らしい。歴史とグロにアレルギーがなければ、普段マンガを読まない人にも安心して薦められる作品だと思います。こざっぱりした絵柄も古代世界によくマッチしてます。
それにしても、日本ではマイナーなディアドゴイ戦争(アレクサンドロス大王の配下による後継者争い)の部将の中でも特にマイナーなエウメネスを主人公にするなんて!西洋史専攻でも知ってる人少ないって!一般読者は言うの及ばず。これにOKを出せるのがアフタヌーン編集部のすごいところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-07 02:27:54] [修正:2010-01-07 02:48:38] [このレビューのURL]

4点 リアル

 現在の漫画界をひっぱる作家の一人、井上雄彦の青年向けバスケ漫画です。
 本作は非常に現実的で重いテーマを扱っており、得意のキレのあるドラマチックな物語展開でそれを読ませるものになっています。単純に漫画としては読んでいて面白いです。しかし、私にはどうも乗り切れませんでした。どうもテーマとストーリーがちぐはぐになっているな、という印象を受けたからです。

 一般読者にとっては、半身不随も車椅子バスケも暴力沙汰の高校中退も身近な話題ではありません。作中にもあるとおり、普通の人は「新聞の社会欄で目にするような」非日常的な問題です。本作ではそれを読者に突きつけて「これがリアルなんだぞ」と読ませるつくりになっています。普段はあまり知る機会のない、厳しい現実(リアル)の問題にショックを受け、目を向けてほしい、という作者の意図が伺えます。このこと自体には私も非常に共感できますし、実際本作で車椅子バスケというものを初めてまともに知りました。

 が、どうもしっくりこなかったのは物語の展開、すなわちテーマの見せ方です。本作は群像劇という体裁をとっており、3人の主人公が直面する厳しい現実(リアル)が交互に鮮やかに描かれます。で、それを得意のリアリティのある画力で魅せつけ、読者を畳みかけていくという、まるで紙の上で映画をやっているような、スピード感のある手法が本作ではとられています。井上氏はこのようなドラマチックな物語の持っていき方が非常に得意な作家で、それが縦横無尽に発揮されているスラムダンクやバガボンドはそれによって漫画史に名が残るヒット作になっているわけです。おそらく。

 ですが、そのようなドラマチックな展開は実は本作では裏目に出ているのではないかと思います。たしかにエンターテインメントとしては、このような緩急のある物語は読んでいて楽しい。その意味で、本作は非常にウェルメイドな、作りこまれた作品です。でも、現実を抉り出して読者に提示する、ある種のドキュメンタリーであることを目指している(と思われる)本作をこの手法で描くのは、なにか違和感を感じます。
 どんなに半身不随や高校中退という現実的でシリアスなテーマを扱っていても、このような映画のようなごてごてしたシナリオで語られては、結局は「リアルな物語」どまりになってしまっているように見えます。最低でも著者は前述のような啓蒙的意図を持ってこの作品を書いているはずです。ですが、本作はそれよりもまずエンターテインメントの側面に重点を置いた作品に仕上がっています。
 でもそれって、現実社会で本当に半身不随に苦しんでおられる方々に対して、何か失礼な気がしませんか?

 要するに、井上氏はこのような現実的な題材でさえもドラマチックな手法でしか書けないようなのです。そしてドラマチックに提示されたものはすでに「リアル」ではなくなる、というジレンマにも気づいていないのではないか、と思います。意図的にやっているとしたら、もってのほかです。

 よくできた物語としては8点。でも、作者の意図する「リアル」とはちょっと違うんじゃないか、ということで大幅に減点して4点としておきます。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2009-05-05 15:22:35] [修正:2009-05-05 15:22:35] [このレビューのURL]

 世にも珍しい(多分)社会人ラブコメ漫画です。

 中身は最近よくあるガサツ女と繊細ウサギ系男子のすれ違いラブコメなんですが、舞台が会社というところがちょっと面白い。学生時代みたいな純な恋愛なんてもうできないし、かといって仕事一本で枯れていくのもせつない。社会人としての事情もある。漫画なので個性的な人々が多数登場しますが、その一方で妙なところに社会人的な「現実」が顔を出したりして、20代の社会人ってこんな感じなのかなと思ってしまいます。

 巻を追うごとに新キャラが続々投入されて恋愛模様がさらにややこしくなっていきますが、毎回わりと能天気なオチがつくのであまり深刻にもならず。

 作者はOLさんだそうで、年一巻とか2年に一巻ぐらいのペースでのほほん続いていって欲しい作品です。あ、あと著者近影の裸エプロンは必見です。

 作品としては6点、もうちょい認知されてもいいんじゃない、ということで応援として+1点、計7点とさせていただきます。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-05-03 01:23:36] [修正:2009-05-03 01:23:36] [このレビューのURL]

 これひとつで「萌え系四コマ」というジャンルを確立してしまったエポックメイキングな作品。キャラ立ちしている女子高生たちによる学生風景が暢気に続きます。ありていに言えば、これ以降の目立った四コマはほとんど「あずまんが+なんとか」で片付いてしまうと思います(あずまんが+オタクあるあるネタ=らきすた、あずまんが+美術=GA、あずまんが+バンド=けいおんetc...)。例外は棺担ぎのクロぐらいでしょうか?。

 しかも大量に出たフォロワーより間の取り方がダントツにうまく、ネタ自体も学園もので新鮮味を失っていない(ポストペットはさすがにきついですが)ため、これさえ読んでしまえばもうこっち系の四コマは十分かも知れません。終わらせ方も潔いすっきりしたもので、なかなか好印象です。

 難点はキャラクタが紋切型過ぎることでしょうか。当時は画期的でも、わんさか出た後続のおかげで今ではありきたりに見えてしまいます。特に天才幼女とかデカ無口少女などはもうどこにでもいる気がします。キャラものに食傷気味の方は最初のキャラ紹介がつらつら続くところでうんざりするかもしれません。久々に読み返してそう感じました。

 ギャグ漫画としての面白さは7点、漫画史におけるマイルストーンを打ち立てた功績で+1点して計8点、ということで。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-05-02 14:35:52] [修正:2009-05-02 14:35:52] [このレビューのURL]