「hopett」さんのページ

総レビュー数: 3レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年01月27日

不条理な現実と、夢。
その選択に頭を悩まし続けるモラトリアム。
現代を生きる人ならば誰もが経験する悩み。
多くの人は夢破れ、もしくは夢を知らず、社会に埋もれていく。

前半は種田と芽衣子の二人の生活を中心に、
後半は種田を失った芽衣子のその後を描く。


芽衣子には夢が無い。
夢は無いが、愛する人はいる。
種田が歌う姿を見ているのが芽衣子の幸せだった。
冒頭で芽衣子は仕事を辞める。
大きくて広い空を取り戻したくて、現実を逃げ出した。

その一方で種田は芽衣子より現実的である。
半ば他人事のように、仕事を辞めてもさまよい続ける芽衣子とは対照的に、
種田は二人の今後を憂慮することになる。
彼にとっても歌は平凡な世の中を忘れさせてくれる大切なものだったが、
種田はバンドを捨て、現実を選び、芽衣子がそばに居る喜びを取った。
1巻の最後で見せた種田の涙は、現実を取ったことへの悔しみだろう。

2巻で芽衣子はギターを始める。
ちょうど、頬に傷を負った後。
――苦しんで苦しんで現実を選んだ種田と、
一見何も努力することなく、成功へと歩むアイドルの姿。
その対比に悔しさを、憤りを覚えてテレビを投げ壊した後のことだ。
最初は良く分からぬまま手に取ったギター。
現実から離れて何か夢中になれることを、
どこかで欲していた芽衣子にはちょうど良かったのかもしれない。
芽衣子はギターに夢中になり、物語はここから最後のライブへと進んでゆく。

ライブは芽衣子にとってどういう意味を持ったのだろう。
作者は芽衣子が過去との決別を選んだ姿を強調している。
過去とは、種田との二人の過去、現実を生きることを拒んだ過去、
そういう諸々の、今までとの芽衣子との決別とも言えるかもしれない。
ライブ直前に剥がした絆創膏と、直った傷跡。もう過去は振り返らない。
だが、ライブの最中に芽衣子は気づいてしまう。
――この曲が終われば、またいつもの生活が待っている。
結局はこのバンドも現実からの忌避でしかないのだ、と。

結局、種田と芽衣子は二人とも現実と夢の中から、現実に生きる道を選んだ。
しかし、二人の姿勢は明確に異なっている。
種田は消極的な、今ある幸せを守るための現実の選択であるのに対し、
芽衣子のものは積極的な、日常の中にある幸せを得るための現実の選択である。
もちろん、所詮現実、――残されて選んだモノであることには変わりはない。
しかし、いくらか希望が見えるのである。
悪い種が芽を出したらさよなら、ソラニン。

人生は真っ青な青空でなくても、ちょっと晴れならいいかもしれない。
そんなことを考えさせてくれた作品だった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-01-28 15:59:27] [修正:2011-01-28 15:59:27] [このレビューのURL]

前半は良かったのに――。
そう思ってしまう典型的な作品。


指揮者を目指す千秋と、気分屋だが確実に何かをもっているのだめ。
幼少期のトラウマが原因で日本を出たくても出れない千秋は、日本で名を上げようとするが、限界を悟ってしまう。
そんな千秋の下に現れた、純粋に音楽を楽しむことしか知らないのだめ。
のだめの才能に気づいた千秋はのだめとともに日本を出ようとする――。

お互いにお互いがなんだかんだ必要で、だから何度もぶつかって。
音楽と恋を見事に融合させた名作、日本編だけならば……。

ヨーロッパ編についてはいろんな人が書いてるからうだうだ書かないけれど、
せめてラストだけもう少し時間をかけてほしかった。
けれども、万人にオススメしたい作品であることに変わりはない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-01-27 00:55:29] [修正:2011-01-28 15:07:31] [このレビューのURL]

あだち充にもう野球漫画は書けないかもしれない。

あだち充ファンで高校野球ファンであるボクからすれば、
『クロスゲーム』は明らかに駄作であると言わざるを得ない。
作中の重要人物の死、幼馴染との恋、甲子園。
前作までを踏襲しただけで何ら新しいものは無かった気がする。

行き当たりばったりの展開、有効に使えなかった登場人物たち。
H2のような個々の登場人物のドラマも薄い。
今作は総じて物足りないものであったように思う。

ただ、あだち充の持ち味である、眩い青春、読後の清涼感は健在。
こういう青春をしたかったと思わせる、そういうところはさすが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-01-27 00:40:37] [修正:2011-01-27 00:40:37] [このレビューのURL]

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