「ROADRUSH」さんのページ

それまであったジャンプ漫画のパターンを世襲しながら、見事なまでのアイデアでその問題点を克服した名作です、これは。
絵はド下手だけど。

「リングにかけろ」から「キン肉マン」「幽々白書」「ドラゴンボール」など、それまでのジャンプ漫画の難点は、敵がどんどんインフレ化していく点にあった。
主人公はそれを努力や修行でより強力な必殺技を手にしたり、より強くなり討ち果たす。
敵を倒すのは、同じ土俵でより強くなることのみ。

だが、この作品では主人公が実力ではなく、ラッキーのみで勝つというのがミソ。
ハチャメチャなんだけど論理的整合性がある、ラッキーという(実は考え抜かれた)ギミックが最高に効いているんですよ。
主人公が次々にかっこいい技を開発したり、果てはスーパー・ナントカになるというのに飽き飽きしていたジャンプ読者にとっては、実に見事な新しい試み。

このガモウひろしという人は、それまでのパターン漫画の問題点を知り尽くしながら、どうやってそれを打ち破るかを考え尽くしてこの作品を生み出している。
間違いなく非常に頭がいい人だと推察されるし、ユーモアのセンスもよい。
もうひとつ、パターン漫画の打ち破りに成功した例としては「ジョジョの奇妙な冒険」で、こちらは「スタンド」能力の多様性と特異性のギミックで、最強ではないものが最強のものに勝つというものだが、こちらはトランプやチェスのような勝負のゲーム性が強い。

ラッキーマンはどちらかというと「カラクリ玩具」に近いギミックで、「風が吹いたら桶屋が儲かる」的な流れを楽しむものだ。
勝ち負けよりその動きの面白さこそが真髄であり、そのため大変に話が明朗快活だ。
ただ、この素晴らしい解決法は、ラッキーマンというキャラクターしか成し得ない。

絵がうまいわけでもないので、ガモウひろしにその後のヒット作がないのがやむなしだし、可哀想ではある。
だが、「とっても!ラッキーマン」は間違いなく名作だ。

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[投稿:2010-10-02 16:55:53] [修正:2010-10-02 16:55:53]

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