「ハカタメンタイコ」さんのページ

いま連載中の野球漫画で、文句なく一番面白い作品。
ストーリーは典型的な少年の成長物語であり、最近の「うんちく野球漫画」に分類される作品だろう。
野球理論をつめこんだ漫画はもう珍しくない。が、この作品にはほかの野球漫画とは明らかに異質な点がある。

この作品の最大の特徴は「グラウンド視点」で描かれているということだ。絵の構図がまず独特。ホームベース方向から見た内野、投手方向から見たバッターといった、つまり野球中継のような絵が比較的少なく、逆に野手から見たグラウンドがふんだんに描かれている。特に地面が広く描かれ(つまり目線がより低い)、ゲームの経過を示すスコアボードがほとんど描かれない。

一般の野球漫画はしょっちゅうスコアボードが描かれ、読者にとっては「スタンド視点」で話が進むのが普通だが、この作品では自分もグラウンドに立ち、まるで一緒にプレーしているかのような臨場感が味わえる。自分は元球児だが、こうした風景はグラブをもって腰をかがめた時に見える風景をとてもリアルに描いていると思うし、選手の心理にスポットを当てながら進行する作品のトーンにもよくマッチしていると思う。

また解説者的な役割をする人がいないのもいい。プレーの説明はほとんどなく、基本的に各選手が思ったこと、判断したことのみが語られる。甲子園観戦に慣れた人には物足りないかもしれないが、練習試合や地方大会序盤での雰囲気の出し方は本当にうまい。

現時点では、高校生の部活動としての野球をうまく描いており、本当にささいな出来事の積み重ねこそが青春なんだなあと感じさせてくれる。野球漫画にもまだまだ未開拓な部分があるということを示した良作である。

ただ今後、部活動が大舞台を迎えたとき(迎えるかどうかわからないが)、この「草の根的視点」がどうなるのだろうか。このあたりを注目していきたい。
いちおう採点の余地を残すということで、現時点では8点を献上します。


ナイスレビュー: 3

[投稿:2006-11-06 18:22:51] [修正:2006-11-06 18:22:51]