あらすじ 日米は、世界でも類をみない高性能な原子力潜水艦「シーバット」を、極秘裡に造り上げる。日本によって資金、技術提供をされた日本初の原潜であったが、米第7艦隊所属という、数奇の宿命を背負った落とし子でもあった。艦長には、海自一の操艦と慎重さを誇る海江田四郎が任命された。が、海江田は突如、試験航海中に指揮下を離れ、深海へと潜行する。米軍は「シーバット」を敵と見なし、撃沈のため第3、第7艦隊を南太平洋に集結。しかし、大胆にもシーバットは艦隊中最大の空母「カールビンソン」の目前に堂々と浮上。独立国家「やまと」を全世界に向けて宣言したのだった。
備考 1990年に第14回講談社漫画賞一般部門を受賞。アニメ・ラジオドラマ化もされている。
この漫画のレビュー
7点 souldriverさん
現代世界を舞台にした漫画で、これほどまで大きなスケールで描かれた作品を他に知らない。
核問題、東西冷戦、南北問題、国家と民族の尊厳、大国のエゴ、戦争と平和、国連の在り方、世界経済の行方、真のネットワーク社会とは……
現代世界を語る上で避けては通れない社会的要素を余すところなく盛り込み、一つの物語として完結させている作者の知識の豊富さと先見性、構成力はすごいの一言。
潜水艦をメインとした話だが、海戦よりもむしろ頭脳戦や情報戦の緊迫感がスゴイ。
多くの政治家や軍人、民間人が関わってくるが、その一人一人がきちんと独立した考え方を持っており、展開には必然性のようなものが感じられた。(作者の主観的な描写も目立つが)
結末には少し納得がいかなかったが、そこにも理想主義的観点ではなく、現実のもとに立って見た一つの未来の形がしっかりと示されていたと思う。
ただ、これだけ高い完成度を誇るにもかかわらずもう一つ作品の中に入っていけない要因は、主人公である海江田のあまりに人間離れした感覚にある。
神のごとき所業をことごとく平然とやってのけるので、彼の行動の整合性が頭では分かっていても、どうしても非現実を感じずにはいられなかった。この海江田に対比した「もう一人の主人公」として登場する深町もやや影が薄く、感情移入がしにくかったというのも大きい。
もう少し魅力的な人物を描けていればこの作品の評価も大きく変わっていたのではないかと思う。
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[投稿:2007-06-21 18:33:06] [修正:2007-06-21 18:33:06]