ホーム > 青年漫画 > 月刊アフタヌーン > ぼくらのよあけ

7.5点(レビュー数:4人)

作者今井哲也

巻数2巻 (完結)

連載誌月刊アフタヌーン:2011年~ / 講談社

更新時刻 2012-01-27 01:09:49

あらすじ 西暦2038年、夏。人類が地球から宇宙を見上げている、それぐらいの未来。団地に住んでいる小学4年生の沢渡ゆうまは、間もなく地球に大接近するという“SH・・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。そんな中、ゆうまは謎にみちたモノと出会う。どうやら地球のモノではない──しかも例の彗星とも何か関係があるっぽい! これって何!? 『ハックス!』の今井哲也が描く宇宙スケールの最新作!!

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この漫画のレビュー

8点 booさん

 きっちり約1年かけて全2巻で完結させてくれました。こういう短い巻で作者のやりたいことをしっかりやりきった漫画は珍しいだけにすがすがしい。

 舞台は2038年の日本。人工知能のお手伝いロボットが一般的になり始め、携帯やパソコンの“つながる”機能は飛躍的に進歩している。
 小学4年生のゆうまは自分の家のお手伝いロボット、ナナコとなかなか折り合いがつかないでいた。ある日友達の家に遊びに行く途中でナナコがおかしくなってしまう。故障かと心配するゆうまであったが、そのナナコに案内されて団地の屋上にたどり着いた先には異星の人工知能が待っていた。地球に墜落した人工知能を母星に帰還させるため、ゆうまと彼の友達は奮闘することになって…。

 私が小学生ぐらいの頃に流布したドラえもんの最終回というのがありました(藤子先生ではなくてファンの創作)。ある日バッテリーが切れて動かなくなってしまったドラえもん。ドラミによるとバッテリーを換えてしまうと耳に存在したバックアップメモリーのないドラえもんは今までの全ての記憶を失ってしまうという。どうしても諦めきれないのび太は猛勉強して一流のロボット工学者に成長し、やがて記憶を消さずにバッテリーを取り替える方法を開発するのだった。というのが簡単なあらすじ。

 これ小学生ながらにすごく感動したんだよね。今考えてもすごく良くできていると思う。「ドラえもん」においては、もちろんいつまでものび太は大人にならない。しかしもしのび太が大人になるとしたら、それは確かにドラえもんと別れる時であり、そして大人になれば夢を追いかけることが出来るのだ。

 「ぼくらのよあけ」はドラえもんともしかすると上のファン創作の最終回にインスパイアされたSFではないかと思う。ぼくらのよあけは最終回までに彼らの“よあけ”、大人になった姿が描かれただけではなく、彼らの親との関わりを通してかつてのび太だった人々の姿をも見せてくれた。家庭や仕事に責任のある彼らは昔のように、彼らの子どものようにもはや冒険することはできない。でも大人になったからこそ分かることがあり、出来ることがある。
 ここで描かれる未来像はまだまだ現実的ではないものの現実の延長線上にあることは強く感じられる。つながりたいしつながってないといけない。子どもは昔も今もそして何十年後であっても楽ではないけど、未来への夢と希望があるのは変わらない。誰もがかつては子どもであって、誰もが大人になっていく。そんな当たり前のことはこんなにもわくわくに満ち溢れている。

 ということでドラえもんを卒業した人にぜひ読んでみて欲しい。別にドラえもんに思い入れがない方でも、誰もがのび太だった時代はあるのだから。
 子どもの頃のわくわくと成長するにつれて失われてしまったものの切なさ、そして大人になったからこそ出来ること。どこにでもあるような普通の団地に宇宙への扉が隠されている。

 大人になったのび太はもう一度ドラえもんに会いに行くのだ!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-01-27 01:11:24] [修正:2012-01-27 13:58:41]

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