吉祥天女のレビュー
9点 red-eyesさん
ボディブローのように効いてくる傑作。”完璧な女性”を描いた作品。
恐ろしいほどの美貌をもつ叶小夜子が、自らに降りかかる火の粉を「女の力」で振り払っていく、という話。ホラーミステリー?
はじめて読んだのは健全な(?)男子高校生だった17歳の時。女性の恐ろしさをぶつけられ、コドモゴコロに衝撃を受けた。読み終わった後、吐き気を催したのを覚えている。女性の事をろくに知らず、SEXも覚えたての当時の僕には、ヘビーすぎたのだろう。
最近になって、改めて読んでみたが、やはりすごい。軽い言葉でオブラートに表現すれば「女の言うイイ女と、男の言うイイ女は違う」。そして、24歳になった今でも、ぜんぜん修行不足だな…と思い知らされてしまう。
女からみた完璧な女は、果たして幸せだろうか?作中では、小夜子は、登場する男のほとんどを手玉に取っている。手玉に取っていない男は、自らの父と祖父ぐらいではないか。この作品に登場する主な男は、形こそ違えども、彼女に服従を強いられている。
もっとも、この男を手玉に取る強大な力は、自らの意思に反した結果をも生む。主人公の死は、小夜子にとって予想外の出来事であっただろうし、作中で唯一ミスをした点である。”完璧な女性”であったとしても、幸せになれるとは限らないということなのかもしれない。
構成自体は、結構単調。男の暴力と女の色、というワンパターンな展開が何回か続く。物語が短いから耐えられる。最後は一気に話が進む。
吉田秋生らしい、性をテーマにした作品。四半世紀ほど前に書かれた作品ではあるけれども、現在でも十分通用する。草食系男子が流行る今の世を、作者はどう思うのか、聞いてみたい。
ホラーミステリーが好きな人、性について考えてみたい人、ちょっと鬱な気分になりたい人は、読んでみてはいかがでしょう。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2009-12-08 11:46:34] [修正:2009-12-08 11:46:34] [このレビューのURL]
6点 朔太さん
伝説の作家の一人、吉田秋生の出世作。
絶世の美女で、地元の由緒ある資産家の孫娘・小夜子が主人公です。
美しいが故に常に男たちから邪まな欲望を抱かれて来た小夜子の
復讐心の凄まじさには背筋が凍るような恐ろしさを感じます。
今も根底には脈々と流れている男尊女卑の風習に泣かされ
続けて来た女たち全ての復讐心の象徴が彼女の存在であるか
のように感じられます。
完璧な女が行う計画と行動は、慈悲の心を持つ反面、
人を罰するという神をも恐れぬ所作になっており、人知を超えた
“天祥天女”のごとくということでしょうか。
漫画ではありますが、文芸的な小説の世界を強く感じさせる作品です。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2017-05-25 05:11:55] [修正:2017-05-25 05:11:55] [このレビューのURL]
6点 くろしびさん
絵が古めかしいが、内容や時代背景的はある意味あってる。
昔の映画やドラマでありそうな内容だが、
あまり今時漫画で見かけないので新鮮。
多分昔の漫画でもあまりないんではない気が。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-08-06 10:36:13] [修正:2010-08-06 10:36:13] [このレビューのURL]
7点 ITSUKIさん
これもここのレビューを見て購入しました。
文庫版の表紙に惹かれたってのもありますが。
天女の末裔といわれる叶家の娘、小夜子が転校してくるところから話ははじまり、叶家の財産を奪おうとする主人公・涼の実家遠野家と小夜子との間の陰謀、事件を描いた作品。
wikipediaだと「ホラー・ミステリー」とされていますが、ビジュアル的な面がホラーなのではなく、
魔性の17歳・小夜子の持つ妖艶な雰囲気や次々と人が死んでいくストーリー展開から「ホラー」と分類されているのでしょう。
自分の生まれるより前(1983年)の作品であるため、メインキャラである高校生達のデザインはどこか時代を感じます。(絵柄にも若干時代を感じます)
17歳とは思えない美貌と、大人びた雰囲気を持つ小夜子は、叶家を守る為に自らに迫る脅威を次々と「女の攻撃(オフェンス)」によって手にかけていきます。
自分の読んだ文庫版全2巻のうち、1巻の後半からストーリーが動き出し、2巻目の方は怒涛の展開でした。
変な超能力を持っている訳でもない、だからこそ小夜子という存在がより「こんな女いたらこえぇ??」と思いました。
また、作中でも言われますが「男の考える完璧な女性」と「女の考える完璧な女性」という像の違いも結構読んでいて面白かったです。
結構ドロドロした内容です。昼ドラみたいでした。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-03-14 23:18:47] [修正:2010-03-14 23:18:47] [このレビューのURL]