ジャングル大帝のレビュー
6点 葵ジュニRSSさん
子供の頃にアニメを見ていて、ジャングルの弱肉強食や動物たちの楽しい暮らしを描いた物語だと思っていた。最近になってしっかり読む機会があったので改めて感想を。
この作品は、動物ものの定番である動物同士の争いと、人間による略奪行為だけに終わらない。レオは弱肉強食のジャングルにおいて、動物同士で争わない平和な世界を作る。それだけではなく、人間と交流をすることにより、言葉を勉強してより人間を知ろうとするのである。
動物同士で平和に暮らすために、家を作ったり、畑を耕したり、物々交換をしたりと、とても人間的な暮らしをジャングルに持ち込んだのだ。人間は本来弱肉強食の世界での頂点であり、ジャングルを侵略したり、動物園に売ろうとする人間たちはジャングルの動物たちにとっては敵であるのに、その人間からもいろいろと学んで良い部分を取り入れるのである。
この物語のもう一つの大筋である、人間同士の醜いムーンストーン
争いと比べると、人間たちのほうがよほど醜く映る。
このように、子供の頃には気づかなったことを、大人になってまた読んでみたら気づくことがある。子供が動物ものとして楽しめるほかに、大人が読んでも楽しめる漫画である。
今の漫画に慣れていると、コマ数が多く多少読みづらいところもあるが、手塚漫画の代表作の1つとして、ぜひ読んでおきたい漫画である。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2013-07-05 21:16:04] [修正:2013-07-05 21:16:04] [このレビューのURL]
7点 ドルバッキーさん
この作品を読み終えたとき、しばらく呆然としてしまいました。
内容はエグくてテーマがしっかりしていました。とても考えさせられた作品です。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2012-04-02 13:52:43] [修正:2012-04-02 13:52:43] [このレビューのURL]
10点 creさん
人生で一番初めに読み、一番多く読み返した漫画。
なにせ、生まれるはるか前から家の本棚にあったから。
うちの父さんは基本的に漫画嫌いなのだが、何故かエイトマンと手塚治虫作品だけは結構な数を所有していた。その中でも特に俺の子供心に響き、今でも思い出すだけで感動がこみ上げてくる作品が、このジャングル大帝。
当時、いきなり主人公レオの父親パンジャが死んだ時は、ええっ、イキナリ死んじゃうのか・・・と、今なら演出と理解できることが、子供心に酷く悲しかったのを覚えている。
その後、ジャングルを開発しようとやってくる白人たちや現地の黒人たちと反目しながらも、人間と心通わせ、人間の言葉まで話せるほどに人間を愛したレオ。初めてしゃべったシーンなんかは本当に心を打ってくれる。
ラスト(と言っても父さんの所有していた単行本のラスト)のムーン山への挑戦で感動は最高潮に達する。伝説に謳われるムーン山、その自然とそれを制覇しようとする人間との戦い。人間を愛する故、人間の側についたレオや人間たちを容赦なく襲う自然の驚異。
その驚異に人間が抗う術もなく、一人また一人と去っていく。猛吹雪の前になす術もなく、ひげおやじとレオ二人になってしまう。最後には自分の毛皮と肉を使ってくれと、命をかけてひげおやじを助けるレオ。
人間は結局自然に打ち勝つことはできないのだろうか。そう、それが手塚治虫先生の伝えたかったことなのだろう。自然に打ち勝てるものは自然しかないのだ。レオの命という自然、それと引き換えにひげおやじと読者全てにそれを伝えようとしたのだろう。
戦争を生き延びた手塚治虫先生が読者に伝えたかったその言葉。レオを通じて日本中の読者に伝わったことだろう。そして、世代を超えて今の世にもこうしてそのメッセージを受け取る人間がいる。手塚治虫漫画の恒久的なその効果。なんと素晴らしいことだろう。
今思えば、父さんが漫画嫌いになってしまったのは、子供の心の形成に一役かうであろう少年漫画雑誌に、このようなメッセージのこもった漫画が減ってしまったからなのではと思う。人間と人間、自然と自然、そして人間と自然。それらの繋がりを問う少年漫画が今の世に何と少ないことか。小学生の頃、家でジャンプ禁止令が発令されたことも今なら納得できる。
将来俺に子供ができた時、父さんの伝えたかったことが本当に理解できた時。
俺はジャングル大帝をその子に読ませるのだろう。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2007-07-27 13:51:28] [修正:2007-07-27 13:51:28] [このレビューのURL]