「カレー」さんのページ

総レビュー数: 24レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年01月16日

10点 HELLSING

20世紀末のヨーロッパを舞台にした吸血鬼ガンアクション。

狂気という言葉がふさわしいような作品。

世界史好きやブラムストーカーの「ドラキュラ」を読んでいるとなお楽しめるであろう。

以下ネタばれ含む。

まず吸血鬼を人間が利用するという図がたまらない。
「吸血鬼=悪、人間に害をなすもの」
→「正義たる主人公が人類のために勧善懲悪する」
というイメージが完璧に崩壊している。

そう恐ろしいのは人間の欲である。


 劇中では「人間」、「狗」、「化物」という言葉が対比的要素として用いられる。

「狗」とは自分で考えることをせず、他者に従い行動するものであろう。「化物」は人間であることに耐えられなかった弱い者。

つまり「人間」とは自らの弱さを受け入れながら、自律し自分の意志で行動する者のことを指すのではないだろうか。

それゆえの「化物を倒すのはいつだって人間だ」なのであろう。



 また吸血に関する考察が印象的であった。
「他者との命の共合 生命の融合 精神の統合 吸血鬼の本質」
(9巻、少佐の台詞より)

この漫画の世界では吸血鬼の繁殖は処女と童貞が血液を吸われた時に起こるらしいが、私は初読時なぜ処女と童貞に限定されるのか理解できなかった。


しかし吸血の本質が他者との融合であるという説明で納得することができた。

吸血にはエロスがある。

それも他者との融合に関わるのだろう。


 英国教会とローマカトリック、ナチスのみつどもえの戦争。

ナチスが第一次大戦を彷彿させるように飛行船でイギリスに攻撃を仕掛けるシーン。

ドラキュラ伝説の串刺し公を連想させるようなシーン。

非常に満足。

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[投稿:2010-01-16 17:28:42] [修正:2010-01-16 17:28:42] [このレビューのURL]

キャラクターの個性や心理描写。
確立された世界観。
テンポの良さ。
駆け引きや能力の応用がカギを握るバトル。
メッセージ性。

傑作。

 多くの少年漫画が絶対的悪に対して正義である主人公たちが戦闘で征伐するという勧善懲悪の体裁をとっているのに対して、戦闘が本質的要素でないところも素晴らしいと思う。

ハンターという職や念をとおして現代を生きる我々に必要な多くのことを教えてくれる作品。



小学生の頃の私は「燃え」ることが難しいヨークシン編をつまらないと感じたが、今読み返すとハンター×ハンターを名作たらしめるものこそヨークシン編だと思う。

登場するキャラクター達の様々な立場から緊迫した街の様子を見ていく表現はこれまでのゴン中心のものと大きく異なる。

少年漫画として「燃え」を重視するならば、幻影旅団を非常な悪の集団として描ききれば良いのだがそうはしない。

ゴンが憤りを感じるように、読者も考えさせられる展開が待っている。

クラピカと旅団の大激突をほのめかす「予言」を見せたうえで、緊張感ある展開に持っていく。


そして緊張がとかれたと思った矢先のパクノダの劇的な死の衝撃は計り知れない。


蟻編に関して私は以下の2つに注目して読んでいる。
1、ゴンの心情
2、王の思考

1のゴンに関して言えば、ヨークシンでのクラピカと近い立場であると言えるように思う。クラピカは一族の仇である旅団の人間的部分に触れ、揺れる(センリツの台詞より)。ゴンもまたネフェルピトーという絶対に許せない存在への憎しみを糧に成長し、現在ピトーがコムギを命懸けで治療する様を見ている。キルアとの今後の関係を含め目が離せない。

 2として王は旅団と同じく完全悪でない。むしろ成長した今は様々な利害関係のあるハンター側より正しいようにすら思える。人類は歴史上戦争で多くの血を流し、そのうえで戦争の代わりとして話し合いでの解決を求めるようになる。しかし、話し合いでの解決を目指すのが王で、戦いを望むのがネテロである。この二人の戦闘の結末も非常に興味深い。


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[投稿:2010-01-16 16:41:47] [修正:2010-01-16 17:00:37] [このレビューのURL]