「ドリンクウォーター」さんのページ

総レビュー数: 6レビュー(全て表示) 最終投稿: 2015年08月25日

世間に名作として認知されているという意味では今更語る必要もないが
自分の逃げ場になってくれたマンガ、という意味でとても思い出深い。

このマンガを表現するには、程よくリアリティのある夢の世界、というのが一番適切な言葉だろうと思う。
そしてこの夢の世界は学生ではなく、日々の生活に疲れた社会人のほうが
より響くのではないかという印象を持っている。

お隣さんが美人三姉妹というのは社会人にはあまり関係の無い話で
むしろ在宅業で一戸建てを借りられるとーちゃんの財力だとか
社会人になっても学生時代のノリでバカをやれる友達の存在に強く感じる。
そりゃあこんな愉快なメンバーがいれば楽しいだろうなぁと考えてしまう。
とーちゃんは、疲弊した社会人男性の夢を体現したような存在ではなかろうか。
もちろん、よつばの目線で描かれる世界は大多数の人間のノスタルジーを刺激し
えも言われぬ感情に襲われることは間違いないだろう。

私は昔のようにこの世界観に逃げ込むことはもう無くなったが
それでもたまに思い出したように読んで、ホンワカとさせてもらっている。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-02-18 01:49:16] [修正:2016-02-18 01:51:43] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

写真を撮られるのを嫌う人がいる。
私もどちらかと言うとその部類の人間で、
写真を撮られるのは構わないが、
自分が写ってる写真を見たくはない
写真には、鏡に映っている自分とはまた違う、
「他人から見た自分」が嘘偽りなく写っていて
自分の中の理想と、他人から見た現実の差を突きつけてくる。


「ぼくは麻理のなか」は、自堕落な引きこもりで
コンビニに現れる美人女子高生“麻理”をストーキングするのが趣味という
どうしようもないぐらいキモい大学生の男、小森功が
ある日突然ストーキングしてたはずの“麻理”になってしまう物語であるが
よくある「男女入れ替わり」の類ではない。

麻理の身体に小森が入るが、小森の身体には今まで通りの“小森”がおり
あたかも小森が分裂したような状態で、肝心の麻理の人格が消えてしまう。
しかも、小森の身体にいる“小森”は麻理のことを覚えていない。
果たして本物の麻理はどこへ行ったのか、というのがストーリーの本筋である。

その中で、麻理に入った小森は、自堕落な生活をしているかつての“小森”と向き合うことになる。
小森は麻理の目を通して、自分の本当の身体とそこに宿るキモい自分を直視する。


どれだけ自堕落な生活を送っていても、自分がダメだと自覚していても
それを変えようとするには大きな勇気が必要である。
自分を客観視する。言葉にすれば簡単だが、それに耐えうる心を養うのは並大抵ではない。
どんな人であれ、多少は身に覚えがあることだろうと思う。

小森功はどうしようもなく、どうしようもなくキモい男である。
しかし、そのキモさには現代のコミュ障と呼ばれる人たちの特性があるように思う。
話をろくに聞かず、勝手に自己完結して相手の気持ちを考えず突っ走り
それを否定されると、自分の存在すべてが否定されたと被害者意識に取り込まれる。
そうして自分のことばかり考えるせいで、ブクブクと自己ばかりが肥大していく。

これは、そのようなキモい自分を直視せざるを得なくなった主人公が
必死にもがいて変わろうとするストーリーである。
見た目は美少女でも、中身はこれ以上無くキモい男である。
そのキモい男がいかにして前に進むのか

「ぼくは…、ぼくを見る!」
このセリフに至るまでの七転八倒と、そこからの成長を是非とも読んでもらいたい。
文句無しの名作である。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2016-02-13 01:15:45] [修正:2016-02-13 01:17:02] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

第二部である「re:」も含めた点数

スタートから全開で面白いマンガではないが
徐々に暖まって、今は全開で面白いマンガのひとつ。
個人的なイチオシポイントを挙げるとするならば
・キャラクターが揃いも揃って人間臭い
・人間臭いキャラが織り成す人間ドラマ
・シビアな世界観
・生きるのがヘタクソすぎる主人公の不器用な生き様
だろうか。

逆に、イマイチポイントを挙げるとするならば
・当たり前だがグロい。そもそも生理的にムリと言う人がいてもおかしくない。
・赫子、クインケといったバトルギミックが直感的にわかりにくい。
・引っ張ってる伏線が意外にショボいのではないかという不安


で、ここからは非常に個人的な感想だが
ここの掘り下げた描写が欲しい、という時に無かったり
このキャラと絡むところが見てみたい、というシーンが無かったり
ストーリーにおいて“あとひと押し”が足りないという印象が強い。
この印象はマンガ全体に漂っていて、作者が何をやりたいのか
何を描きたいのかという部分がイマイチ見えてこないのも事実。
なのでストーリーの終わりの予想がまったくつかない、これは楽しみというより不安
とはいえ今現在続きが気になるマンガのトップ5には入る。

反捕鯨活動、動物園、食肉とペットショップ
こういうワードに何かピンと来るものがある人なら楽しめるかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-02-13 00:27:24] [修正:2016-02-13 00:30:46] [このレビューのURL]