「roka」さんのページ

総レビュー数: 10レビュー(全て表示) 最終投稿: 2017年06月25日

「怖いもの見たさ」という言葉をこれほど強く意識した漫画はない。
私たちは基本的に美しいものが好きで、醜いものは見たくない。
でも、人間ってそんなに単純でもない、と思い知らされた。
あまり入り込むと、自分の感情が歪んでいきそう。
例えば、作中でどん底に落ちた人間と自分を比べて安心するようなものの考え方は、健全とは言い難いから。
しかし、何が凄いって、これだけ陰惨なのに、ちゃんとエンターテイメントとして成立しているところ。
そして、主人公だって社会の屑なのに、ちゃんとヒーローとして成立しているところ。
ウシジマ君は善人ではないが、筋は一本通っている。
情報が溢れ、子どもですら単純な勧善懲悪なんて信じなくなった現代、まさに、時代に求められたヒーロー像と言えるかもしれない。
「大人になるとは、孤独を受け入れること」。
闇金を賛美するきはないが、この一点には、全面的に同意する。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-06-26 00:13:41] [修正:2017-06-26 00:13:41] [このレビューのURL]

9点 アカギ

まことに失礼なことを言うが、少なくとも絵を見て「読みたい」と感じさせる漫画では全くないと思う。
漫画は、雑に言えば、絵と文字だ。
その絵に、魅力はない。
正確には、この絵に「味がある」と感じるのは、実際に読んで、漫画の世界に引き込まれた後の話であって、「入口」での魅力ではない。
そういう「飛車角落ち」のような勝負を漫画という賭場で仕掛け、それに勝利した福本氏は、本当に凄いと思う。
「そんなギャンブル、ありかよ」と作品の中で何度も感嘆したが、そもそもの尋常ではないギャンブルは、福本氏が「漫画」を選んだ、というその事実ではなかろうか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-06-26 00:08:05] [修正:2017-06-26 00:08:05] [このレビューのURL]

「こういうふうにしか生きられない」ということの絶望が、古谷実という作家のテーマなのではないかと思っている。
育った環境も幼少期のトラウマも関係なくて、「決まってしまっている」ことは、あるのだ、と。
(余談だが、映画版は、この文脈を逸れてしまったのが、個人的には残念だった。映画の出来はよかったけれど。)
なぜ、そうなってしまうのか。
例えば、人殺しに。
そこに理由がある人もいる。
でも、それが理由なき必然である人もいる。
じゃあ、どうすればいい?
どうしようもない。
だから、絶望なのであって。
そのテーマを「こちら側」から描いたのが「ヒミズ」で、「あちら側」から描いたのが、「ヒメアノ?ル」なのだと思う。
この人の作品は「焼き直し」とよく言われる。
そうかもしれない。
けれど、裏を返せば、古谷実という人は、何度も同じテーマに向き合っている、ということでもあるのではないか。
その姿勢が、僕は嫌いではない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-06-25 23:26:59] [修正:2017-06-25 23:26:59] [このレビューのURL]

どうしようもなく心を揺さぶられた。
涙は出なかった。
ただ、心が痛かった。
そういう作品だと知っていて読んだ。
だから、こんなことを言う資格はないのだけれど、「こういう漫画が本当に必要なのか」という考えがよぎった。
作者さんに申し訳ない。
もう二度と読まないかもしれない。
もう一度読んでしまうかもしれない。
ただ、よくも悪くも、これほど深く感情を切り裂かれた漫画は、私にはあまりない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-06-25 23:19:41] [修正:2017-06-25 23:19:41] [このレビューのURL]

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