「右から左へ。」さんのページ


仇敵が魅力的な漫画。原作は読んでいない。

原作があるから、難解な哲学っぽくならなくてよかった気がする。もっとも、原作をかなりアレンジしたようではあるが。藤崎竜の漫画はある程度歯止めがないと、分かりづらくなって少年漫画に向かなくなるだけでなく、一般の読者にも読むのがつらくなる。ここらで話を戻すと。

何より妲己が最後まで魅力的な悪役を演じられたということが、この漫画を面白くさせた。紂王を操り、国を乱す悪女という初めの設定は、いかにもな悪役像である。だが、その真意が、話を進めていくごとに徐々に明らかとなっていく。その大筋の流れが決定していたからこそ、様々な伏線が回収でき、壮大なスケールの話となっても話が破綻せずに、持ちこたえることができた原因であると思う。

また、読者と等身大の主人公に好感が持てた。常に精一杯、力一杯、限界まで頑張る、既存の少年漫画の主人公像のイメージが、私の中ではこの作品で変えられた。ダルいダルい、と普段はサボっているが、やらなければならないときには力を入れて頑張る。そういうメリハリのよさが見てて好感が持てた。この後に続くだるだる系主人公にも影響を与えたのではないだろうか。

全体的に、少年漫画としては伏線を何とか回収しつつ、ラストまでうまくまとめた感のある漫画である。さらに、脇役にも恵まれて、華のある漫画となった。夢中になって読むことのできる、良作の少年漫画。ぜひ一読していただきたい。7点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-19 16:06:46] [修正:2008-10-19 16:06:46]