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総レビュー数: 52レビュー(全て表示) 最終投稿: 2008年10月09日

[ネタバレあり]


古本屋で全巻で500円という超破格の値段で手に入れたので、あまり期待はしていなかった。だが、思いのほかお値打ち品であった。

私はこの漫画を主人公である秋の成長の物語として読んだ。

作品のほぼ全ての場面で三角関係であり、モテモテで美形、恋愛テクも抜群のコテコテの主人公は、何と実は童貞のカメオタクだった、というわけわからん設定に戸惑いつつも読み進めた。主人公の整形でもしたのかというほどの変わりっぷりに、まずは突っ込まずに読み進もう。彼は1年半の修行で変わったのだ。

序盤のアリサとユイの間で主人公が揺れ動くときは、確かに他のレビュアーの述べるように普通の恋愛漫画っぽい。普通にかっこつけたがりで、弱みを見せず、完全人間(何だそりゃ)な秋。序盤はヒデを代表とする脇役のナイスなキャラもあって、話が面白い方向に進んでいく。

中盤、モトミと秋がユイをめぐって死闘を繰り広げる。PK勝負あたりから終盤への布石が敷かれ始めたと思う。ヘルスケがちょっと無茶な設定だったとは思ったが。とりあえず、ここまでは普通の恋愛漫画として読んでいた。

終盤、秋が水族館でバイトを始めた頃から本格的に漫画の路線変更というか山田玲司の本当に訴えたいものが出てきた。10巻ぐらいでまとまった作品になっていたとしたら、趣の異なる、単なる普通の恋愛漫画で終わっていたのではないか。作者の山田玲司は15巻の巻末で、この漫画の真のテーマは「生きてるのってまんざらでもないよ」であると語っている。上記のテーマに沿いつつ、この漫画を、恋愛やその他諸々の事案に対する中での秋の成長の物語としてとらえるならば、この展開はアリではないだろうか。ラストもすっきりとまとまっていたし、そんなに悪い展開でもないように思われた。彼こそ真の男として成長した。応援したくなる主人公像である。最後までBバージンを貫いた秋は格好よかった。自分のすべてをさらけ出して、相手といいところだけでなく、苦しいこと、いやなこともわかちあう。そういった恋愛の理想像が、説教臭くない程度に作者から語りかけられた気持ちになった。

全体的に見て面白い漫画だと思う。序盤、中盤、終盤とそれぞれ趣を変えつつも、根幹のテーマはぶれていない。山田玲司の訴えたかったものは、上記のテーマとともに、恋愛を通じた秋の人間的な成長に尽きると思う。人によっては、生活に影響が出てしまうほど読みふけってしまう漫画。8点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-26 22:07:16] [修正:2008-10-26 22:07:16] [このレビューのURL]


まず何より、3巻の帯にも書いてあるが、これだけハイテンションな将棋漫画、将棋を面白おかしく描いた漫画を見たことがない。独創性あふれる作品。将棋なんだけど、これはもうバトル漫画のノリ。それぐらい熱い。

将棋漫画っていうと「月下の棋士」を思い浮かべる。あの漫画はあの漫画で、精神の限界のところで戦うプロ棋士たちの狂気をうまく表現できていると思う。月下の棋士を静とするなら、この漫画は動って感じ。色々な設定で笑わせてくれるのも、賭け将棋っていう設定があるからこそ。様々な生い立ちの人間を描けるから笑いの要素を確保できる。おふざけシーンは多いが、それがいい。月下の棋士より門戸が広い漫画であることは確かだと思う。純粋な将棋漫画とみたら、当然月下の棋士の方が上出来ではあるけど。そこは総合力でカバー。

将棋っていうと堅苦しいイメージがあるのだが、それをブルドーザーで壊した感じ。コマ割りも大きくて、スピード感あふれる指し手を表現できている。さくさく読める。面白い。熱い。絵はそれほどうまくないのだが引き込まれる。将棋を知らなくても楽しめる。知っているとなお楽める。

全体的に見てお買い得な漫画だと思う。将棋漫画だからといって敬遠せずに、一読を勧める。立ち読みでも十分面白いけれど、面白すぎて買ってしまった。人によっては生活に影響が出るほど読みふけってしまう漫画。8点。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2008-10-23 20:50:12] [修正:2008-10-23 20:50:12] [このレビューのURL]

8点 capeta


熱いし、いい作品。

天才を描かせるとうまい作者。天才といっても、凡人である自分が読んでも共感できるような主人公である。自分の大切なことになると喜怒哀楽が表情に出て、負けず嫌いな人。

だが、何かが足りない。ライバルはうまく描けてるのだが。脇役にもう少し上昇志向の普通な登場人物を配置してもらいたかった。主人公も共感できるんだけど、優等生すぎるというか。

結構シビアな状況の中でも、みんなひたむき。常に前を向いて、ライバルを追いかける。そういう主人公たちが魅力的でもあると同時に、見てて疲れる。どうしても凡人としての読者としては、普通あんなにシビアな世界に生きてたら、みんながみんな進むだけじゃ無理だ。覚悟はあっても折れてしまう時があると思う。敗者は立ち去るのみ。その事実は描かれているのだが、敗者をもう少し深く描いてほしかった。

漫画の中に引き込まれるんだけど、パワー不足だったのかな。どこかでそういうことを考えながら読んでしまった。スラムダンクは天才ばかりの中でも楽しめたのだが。

カートとかF1とかはあまり詳しくなかったから、そこら辺りの描写は迫力があったし(詳しい人でもそうかも)、知識面でも作者の自動車レースに対する思い入れが感じられた。

全体的にみると良作の漫画といえる。漫画に完全には引き込まれなかったが、登場人物の熱い鼓動は伝わってきた。しかし、うまく言語化できなかったのが残念だが、このモヤモヤ感を感じる人は結構いるかもしれない。少なくとも私はそう感じた。人によっては日常生活に影響がでたりする作品。8点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-15 13:40:13] [修正:2008-10-15 13:40:13] [このレビューのURL]


囲碁という既存の漫画が扱ってこなかった題材をテーマに、少年誌という媒体に掲載された意欲作。

一時期(今はもう下火となってしまったかもしれないが)、小中学生の間で空前の囲碁ブームを引きおこすこととなり、社会的にも大きな影響を与えた漫画である。

原作者のほったゆみと、作画は卓越した画力で名高い小畑健のコラボレーションという時点で、面白い漫画の確変到来といった感じである。その期待を裏切らない秀作だ。

主人公とそのライバルの対決、葛藤を中心に、魅力的な性格の佐為や他の登場人物との友情や、ユーモラスな日常も見事に描かれている。主人公と同年代の頃この漫画を読んでいたこともあって、素直すぎない、年頃の子どもである主人公が好感の持てる主人公像であった。また、ライバルも家柄による苦労が描かれており、環境の中で悩む姿は共感が持てた。何よりの魅力は、囲碁のことを知らなくても楽しく読めるということであろう。囲碁をとりまく、上記のような登場人物の繰り広げる人間模様を見事に描けていたからだ。

だが、院生となったあたりから面白さに陰りが見えるようになった。話が大きくなりすぎたことに加えて、囲碁の対局シーンがメインとなり、囲碁のことに詳しくない読者は取り残されてしまったからだ。佐為編までで終わっていれば、もっと評価が高くてもおかしくないだろう。

上記のような欠点もあるが、全体として少年誌にふさわしい、さわやかな良い漫画であることは間違いない。周囲に親しい小中学生がいればおすすめしたい漫画である。(もちろん大人でも楽しめるが。)人によっては生活に影響が出るほど、夢中になって読むことのできる漫画。8点。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-10-10 10:25:19] [修正:2008-10-10 10:25:19] [このレビューのURL]

8点 レベルE


作者の持ち味がいかんなく発揮された、良作である。

富樫義博の漫画の中では最も好きな漫画である。
この作品の最大の魅力は、主人公の性格と行動が見事に一致している点であろう。小憎らしいほどに頭がよく、周りの登場人物を振り回すものの、どこか憎めないこの主人公は富樫義博の人格を具現化したものではないかと思うほどだ。(実際そうなのかもしれないが・・)

また、三巻で完結という短い内容でありながら、それぞれの話を、主に数話完結の形でテンポよく、かつまとまりのある内容にしたててある。先が読めないが、支離滅裂ではないことも、作品を面白くしている。

しかし、残念なことは、この漫画が週刊少年ジャンプという少年誌を媒体として描かれた漫画であるということだろう。内容的に青年誌を媒体としていればさらなる読者を獲得できたように思われる。そもそも、他のレビュアーの述べているように、小学生も多く読む週刊少年ジャンプでこの作品が掲載されたことがすごい。(しかし、この漫画はストライクゾーンの狭い漫画だからこそ、高い評価を受けている気がしないでもないが・・)

また、三巻で完結ということは、テンポがよく、まとまりのよい漫画としているのは事実であるのだが、もう少しこの漫画の続きを見てみたかった。

しかし、総じて見れば間違いなく一度は読んでみてほしい漫画である。上述のように、好き嫌いは分かれるが、好きな人はとことん好きになる漫画。それがこの漫画の正体ではなかろうか。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-10-09 20:57:41] [修正:2008-10-09 20:58:35] [このレビューのURL]