「何某何」さんのページ

9点 月ノ光

花輪和一がその独特な、乾いて飄々とした境地を見い出す前に、描かれたこの初期作品群は、

極めて沈鬱で
極めて陰気で
極めて不吉で
極めて醜く
極めて憎たらしく
極めて惨たらしく
極めて救いがない

その後の作品のような、痛快さ、幽玄さ、荘厳さ、お笑い要素、哲学的要素、仏教的側面などまったく見当たらない。
ただひたすら作者個人の背負った根深い怨念がどこまでも書き出されているだけ。
それでいてその短編作品達のどれもが、ひとつの物語として見事に成立しているのだから不思議なものだ。
心の奥底の憎悪を漫画に託しつつも、そんな自身をどこか冷めた目で見ている自分がいたからこそできたことなのだろう。

だから、一度でも世界を激しく憎んだことのある人は、是非この作品に手をつけるべきだ。
ただし、善良で純粋な人間には絶対に見せてはいけない。

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[投稿:2009-11-17 12:10:39] [修正:2009-11-18 00:46:29]