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6.75点(レビュー数:16人)

作者落合尚之

巻数10巻 (完結)

連載誌漫画アクション:2007年~ / 双葉社

更新時刻 2010-03-10 19:38:20

あらすじ “ひきこもり”と援交女子高生。接点のないはずの両者が出会ったとき、ある「計画」が動き出した……! ドストエフスキーの名作を原案に、現代の少年少女たちの抱える闇に迫る問題作。主人公・裁(たち)弥勒(みろく)は、将来を嘱望されて上京するも、大学にもバイトにも行かず部屋にこもる日々……。肥大する自尊心と、過敏な劣等感を持て余す弥勒の脳裏に、ある恐るべき「計画」が宿る!!

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罪と罰 A Falsified Romanceのレビュー

点数別:
6件~ 10件を表示/全16 件

9点 ゆむでさん

非常によくできた作品だと思います。
一人の青年の殺人に対する正義の在り方と葛藤を描いた物語。

特に1,2巻の殺人の描写が非常に生々しく、リアルで、まるで自分自身が殺人を犯したかのように感じられます。

終盤は息をのむような展開が続き、ドキドキしながらページをめくった覚えがあります。

全体を通して、非常に人物の描き方がうまく、それぞれのキャラクターがいい味出してました。特に須藤と飴屋菊夫はかなり良かったです。また、普通ならかなりグロテスクで見るに堪えないような描写でも、この漫画ではなぜか自然と受け入れることができました。それよりももっとドロドロとした人間の心の闇のようなもののほうが非常に鮮烈な記憶として残っています。やはりこの漫画の特筆すべき点は人物の心理描写がうまく表現されているところでしょう。主人公だけでなくその周囲の人の心理的な変化を鮮明に表現できています。
この漫画そのものが芸術と言っていいでしょう。

あと、最終巻の作者からのメッセージは必読です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-10-16 00:36:09] [修正:2013-10-16 00:36:09] [このレビューのURL]

6点 DEIMOSさん

名作文学の現代版リメイク作品。

漫画にする必要がないほどこの漫画は文芸作品である。絵はお世辞にも上手いと言えないし、漫画でなければ表現できない描写は皆無。それでも、無駄に奇をてらわないストレートな描写のおかげでスイスイと読める「読み易さ」がある一方で、台詞まわしは鮮烈な印象を残す。

計算高く、正義感が強く、孤高を好む主人公像は一見するとDEATH NOTE(夜神月)に近いが、巻が進むほどに主人公は「人間臭さ」を獲得し、オリジナルのラスコーリニコフとも異なる「キャラクター性」を獲得していく。

個人的には、「世直し漫画」であると期待しながら読み始めたため、「罪との向き合い方を巡る人間成長」が主題となると知り、その陳腐さに最初はがっかりしたが、人間の生きる意味や対人依存の本質などを抽出する部分にカタルシスの「ツボ」をシフトした後は、それはそれで面白い文学作品などだと思えた。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-12 00:01:14] [修正:2013-02-12 00:01:14] [このレビューのURL]

9点 ウォーリーさん

6巻まで読んだ。ドストエフスキーの「罪と罰」を現代風にした作品。

読んでて難しかった。人を救うために「殺す」という手段を使うことはいいことなのか、否か考えさせられた。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-01-27 10:30:02] [修正:2012-01-27 10:30:02] [このレビューのURL]

8点 そうすけさん

心が重くなり、心臓が締め付けられるような苦しさがあるけど、それでも続きを見てしまう何かがある。

最終巻が駆け足で、物語が動くわけでもなくほとんど言葉のみで締めたのはやや拍子抜け。元がそうなっているからかもしれないが。

ただやはり最初の1、2巻の印象はかなり強い作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-07-21 16:11:57] [修正:2011-05-26 05:13:08] [このレビューのURL]

8点 ジブリ好き!さん

多くの方が原作を知っていらっしゃるでしょうから蛇足となりますが、
倒叙形式で描かれたこの作品を、ただのミステリーと見ることはあまり意味がないし、主人公の犯す犯罪自体に目新しいものはありません。
しかし丁寧かつリアルに描かれた主人公の思想や心理変化は、巻を重ねるごとに読者をぐいぐいと引き込んでくれるのです。

「罪」が犯罪(今作では殺人)のことだとすれば、犯行そのものの心理や感覚は実際に殺人を犯してみないことにはわかりません。故に殺人そのものにリアルさを求めることは難しいはずです。
犯罪者を取材すればある程度の理解はできるでしょうが、言葉で表しきれない感覚的な部分は伝わりきれないでしょう。(今作で主人公が、「もう僕は誰とも分かり合えない」と幾度となく呟いているように…)
もちろん、落合先生もドフトエフスキーも、犯罪者ではないので、やはり犯行時の描写に目新しいものはありません。

この作品の優れたところは、「罰」の部分です。
犯罪を犯した者の、思想崩壊や虚無感、恐怖感。そういった部分が恐ろしく秀逸に描かれています。
ドフトエフスキー自身が政府に監禁された経験を持ち、死刑直前までいっています。その恐怖感や虚無感はナマです。もちろん、犯罪を犯したわけではないので、その心理が完璧に一致しているわけではありませんが、一般人以上に罰に対する感覚は強いはず。

まとめると、この作品、犯罪自体や犯行時の心理描写・行動に目新しいものはなく、正直、4巻までなら特筆すべき点はありません。
しかし、5巻以降の面白さは凄まじい。罰に対し怯えながらも、早く捕まってしまいたいとする主人公の葛藤。
そして何より、罰を逃れた後の、「もう僕は誰とも分かり合えない」と孤立してしまう様。7巻まで一貫して良心の呵責を感じない主人公を、唯一苦しめる鎖です。
犯罪に手を染めて初めて理解する、「僕には資格なんてなかったんだ…」
弥勒にとっての罰とは、この「孤独」や「思想の崩壊」なのですね。

原作に忠実ながらも、舞台を現代風刺的に設定し、またオリジナルストーリーを足すなど、原作既読者にも十分楽しめる内容に仕上がっています。


(完結追記)
余韻残る締めくくり、この作品への思いの強さを物語るあとがき、最後まで本当に楽しめた作品でした。
かつて原作を読んだ多くの方にもオススメしたい作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-08 19:23:15] [修正:2011-04-29 02:47:28] [このレビューのURL]

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