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6.75点(レビュー数:16人)

作者落合尚之

巻数10巻 (完結)

連載誌漫画アクション:2007年~ / 双葉社

更新時刻 2010-03-10 19:38:20

あらすじ “ひきこもり”と援交女子高生。接点のないはずの両者が出会ったとき、ある「計画」が動き出した……! ドストエフスキーの名作を原案に、現代の少年少女たちの抱える闇に迫る問題作。主人公・裁(たち)弥勒(みろく)は、将来を嘱望されて上京するも、大学にもバイトにも行かず部屋にこもる日々……。肥大する自尊心と、過敏な劣等感を持て余す弥勒の脳裏に、ある恐るべき「計画」が宿る!!

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罪と罰 A Falsified Romanceのレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全16 件

8点 ジブリ好き!さん

多くの方が原作を知っていらっしゃるでしょうから蛇足となりますが、
倒叙形式で描かれたこの作品を、ただのミステリーと見ることはあまり意味がないし、主人公の犯す犯罪自体に目新しいものはありません。
しかし丁寧かつリアルに描かれた主人公の思想や心理変化は、巻を重ねるごとに読者をぐいぐいと引き込んでくれるのです。

「罪」が犯罪(今作では殺人)のことだとすれば、犯行そのものの心理や感覚は実際に殺人を犯してみないことにはわかりません。故に殺人そのものにリアルさを求めることは難しいはずです。
犯罪者を取材すればある程度の理解はできるでしょうが、言葉で表しきれない感覚的な部分は伝わりきれないでしょう。(今作で主人公が、「もう僕は誰とも分かり合えない」と幾度となく呟いているように…)
もちろん、落合先生もドフトエフスキーも、犯罪者ではないので、やはり犯行時の描写に目新しいものはありません。

この作品の優れたところは、「罰」の部分です。
犯罪を犯した者の、思想崩壊や虚無感、恐怖感。そういった部分が恐ろしく秀逸に描かれています。
ドフトエフスキー自身が政府に監禁された経験を持ち、死刑直前までいっています。その恐怖感や虚無感はナマです。もちろん、犯罪を犯したわけではないので、その心理が完璧に一致しているわけではありませんが、一般人以上に罰に対する感覚は強いはず。

まとめると、この作品、犯罪自体や犯行時の心理描写・行動に目新しいものはなく、正直、4巻までなら特筆すべき点はありません。
しかし、5巻以降の面白さは凄まじい。罰に対し怯えながらも、早く捕まってしまいたいとする主人公の葛藤。
そして何より、罰を逃れた後の、「もう僕は誰とも分かり合えない」と孤立してしまう様。7巻まで一貫して良心の呵責を感じない主人公を、唯一苦しめる鎖です。
犯罪に手を染めて初めて理解する、「僕には資格なんてなかったんだ…」
弥勒にとっての罰とは、この「孤独」や「思想の崩壊」なのですね。

原作に忠実ながらも、舞台を現代風刺的に設定し、またオリジナルストーリーを足すなど、原作既読者にも十分楽しめる内容に仕上がっています。


(完結追記)
余韻残る締めくくり、この作品への思いの強さを物語るあとがき、最後まで本当に楽しめた作品でした。
かつて原作を読んだ多くの方にもオススメしたい作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-08 19:23:15] [修正:2011-04-29 02:47:28] [このレビューのURL]

8点 レビュのすけさん

あのドストエフスキーの名著「罪と罰」を現代版にアレンジした本作。

モチーフである原作が執筆されたのは1860年代。

ともすれば全く原作の持つ世界観、哲学的なテーマとはかけ離れてしまいかねないこの作品だが、

作品の序盤を貫くテーマである主人公の「正義」に関する思想、理論(崇高な目的達成が流された血をあながう)や、主人公の性質、「罰」苛まれる様などは忠実に描かれている。

また、原作で使われている心理描写をそのまま漫画表現するなど、原作の世界観を踏襲することに成功している。


ストーリー自体は全くの別物だが、引き込まれるような展開になっているし、独特の暗いタッチも作品を引き立てている。

現在連載途中だが、ここから面白くなるはず(原作と同じような展開なら)なので、非常に期待の持てる作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-12-09 22:09:34] [修正:2009-12-09 22:09:34] [このレビューのURL]

6点 朔太さん

10巻を読むのが苦しく、正直胃が痛くなるような
悲惨な内容でした。

主人公の弥勒のみならず、ヒロインのエチカの地獄の
ような過去、氷のような心を持つ首藤が見てられない。
自分は資格がある人間という妄想の上、罪をわざわざ
作った挙句にその罪悪感に苦しむ弥勒も見てられない。
それならば、悪事を働いても心を痛めない本当の悪党
たちが、正当化されてしまう矛盾がある。
この世の中が良くならないのは、悪魔のような悪党たちが
自身の罪を感じないことと罰が与えられないため。

本作品でも使われていたが、イジメという隠れた悪事、
しかも大半の人間は見て見ぬふりをして、自身の罪を
自覚すらしない。
被害者は自殺すら常に考えているのに。
そこのところの解決策が提示されない以上、現代の
人間社会は未成熟としか言えない。
未成熟な社会が罪であり、そこでしか生きられない世界が罰なのである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2021-11-23 17:51:58] [修正:2021-11-23 17:51:58] [このレビューのURL]

7点 gundam22vさん

世界的な名作「罪と罰」を現代日本にリメイクした作品。原作の記憶は曖昧になっていますが、要素や大筋を取り込み調整や解釈を行い上記の目的を及第点で達したのではないかと思います。
あとがきを読むと作者の原作愛と努力が窺えます。
後半は文字が増えてダラダラしたかなと思う部分に残念さはありましたが、なかなかの意欲作だったと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-07-24 18:39:36] [修正:2017-07-24 18:39:49] [このレビューのURL]

6点 peonyさん

大義の「殺人」、弱い「売女」、卑しい「権力」。
私はどれも「悪だ!」と思うけれど少し気持ちが理解できて、
怖くて不安で考えさせられちゃう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-05-10 03:39:21] [修正:2015-05-10 03:43:53] [このレビューのURL]

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