モテキのレビュー
6点 rankyさん
やっぱり俺はダメなんだという男性が
モテキを向かえて、どうなるという話。
私個人としては、
主人公と世代も考え方も非常に似た人間でして
非常におもしろく読めました、
この作品が、けっこう話題になっているのは、
時代性をうまく読み取って
うまく分析しているところが新しく納得感のあるものだったからだと思います。
「俺が悪い」
聞こえはいいですが、人間は社会の中で生きてこそ人間なわけで、
内観・内省ばかりしていてもしょうがない。
自分自身を評価する人間は、他人でも良いはず。
他人から評価をもらうためには、自分で断定せずに前に進まなければならない。
男女問わず、表面の仲良しだけではなく、
それが壊れてもよいという覚悟の上での一歩進んだ関係性。
ただ、それができずに自分自身が行う評価しか信じられずに前に進めない。
そんな時代性があるのかもしれません。
読みながら「なるほど」とは思いました。
そういう意味では面白いマンガだと思います。
ただ、夢中にはなれなかったというのが正直なところ。
それは、「なるほど」を感じさせるわかりやすさがある分だけ、
非常に客観性が強くなってしまい、感情移入ができなかったからかな思います。
そして、感情移入できなかったのは、
人間や社会なんて、「なるほど」と簡単に理解できるほど
単純じゃないからからかなと思ってます。
私も偉そうに時代を語ってみてますけどねー。
おあとがよろしいようで。
ナイスレビュー: 4 票
[投稿:2010-06-26 05:36:51] [修正:2010-06-26 05:36:51] [このレビューのURL]
6点 白い犬さん
各所で話題になっています。
私も連載中楽しみでした。しかし、その終わりかたに肩透かしをくらった。
あれ?こんなんで終了?みたいな。
そんな漫画が、なんでブログやら著名人の間で読み語られるかというと、出てくるキャラがいままでの漫画の型にはまっていない、自分や知り合いに思い当たる要素があるからでしょう。
美人で男に困っていないような土井亜紀も、美人ゆえに男性が勝手に『美人フィルター』をかけて近寄ってきては勝手に幻滅されて去っていくという苦い経験をかさねている。
逆に自分の女らしさに自信がなく、男が恋愛対象としてよってこないいつかちゃん。実は彼女は彼女で趣味の合う男友達にそれなりにモテている。(本人は気づいてないけど)
恋愛強者の友人島田すらも、もてない高校時代の反動で遊びまくるが、女に流される自分に嫌悪して苦しむ。
そして主人公フジは「自分は他人と比べ、すべてにおいて負けている」。その劣等感で苦しんでいる。
しかし、先に書いたように、周囲の勝っていると思われる人々も、実は必ず負けを背負っているのだ。
それに気がつかず「お前らは勝ち組だろ、いいよな」と不貞腐れるフジ。(不貞腐れるのって実は周囲をけっこう傷つけてるんですけど…)
その中で最強にして最凶のモンスターが小宮山夏樹だ。
フジは彼女を理解できない。あたりまえだ。
彼女は勝ち負けすらどーでもいいのだ。
やがてフジは小宮山夏樹を通して他者と比べて負けていたではなく、自分の作り出した自分に負けていたと気がつく。
そして他者は冷たく暖かく自分と関わっていてくれたことを悟り、「今の俺に」たどりつく。
モテキ(完)
勝利を勝ち取る物語ではなく始めの一歩の物語。それがこのモテキだった。
後にネットの対談で作者が「これは仕事で言うならニートが会社に行って僕を雇ってください、というまでの話でサラリーマン金太郎みたいになる話じゃない」といっていたので納得しました。(そのことをネットの対談ではなく作品で明確に描いてほしかったが)
物語にはカタルシスがあってすっきりと終わると読了感がいいものだから、作品としてはこの点数が妥当ではないかと。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-08-04 11:44:56] [修正:2010-08-04 11:44:56] [このレビューのURL]
2点 そのばしのぎさん
モテ期、草食系という言葉が出てくるが、漫画のテーマからは、ずれている気がする。
主人公のコンプレックス克服という観点から読むには、あまりにもその原因など土台が希薄。
ハーレム物の漫画は多いけど、シチュエーションは同じでありながら何かが違う。
男性心理が表現できる女性作家がそれほど希少とも思えないので、「女性作家の描いた男性視点」というレッテル貼りはしたくない。描けないのか、女性読者を対象にしたため、描く気がなかったのだろう。
女性誌向けの内容をイブニングで連載したから異色さが際立ったと思える。
読者層の性別分布には興味がある所。
個人的な感想だが、主人公は異性の知人とセックスする事しか考えていないし、行動原理もなくただ周りに流されるだけ。惚れる理由を要約すると「つき合えそうだから」ぐらいに見える。
何より登場する女性に何ら魅力を感じない。人生で重要視される願望は人それぞれだが、この漫画には恋愛こそ人生という人しか出てこない。彼女どころか友人としても欲しくない。
そういった意味では、ぶっとんだ人ではあるが仕事に人生かけてきた漫画家の先生に一番リアリティを感じた。
共感できないというより、行動や思考パターンが相容れないのでイライラして読むのが辛い。一巻でこれはキツいと思ったが、レビューのために読んでみたが最後まで同じ調子だった。
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2010-10-16 16:31:18] [修正:2010-11-04 20:58:42] [このレビューのURL]
8点 ジブリ好き!さん
自分が主人公に感情移入できるか否かで、この作品の面白さも変わってくると思う。
この漫画はかなりのリアリティをもって描かれている。しかし、これがリアルかどうかは、人それぞれだ。
でもこの漫画を120%楽しめるのは、やはり自分が今でいう「草食系男子」である必要があると思う。というか、そうであれば嫌でも主人公に自分を重ねてしまえるのだ。そうなると、ストーリー的に面白いかどうかはどうでもよく、自虐感に苦笑さえしてしまえる。
しかし痛みを感じるのは序盤だけで、中盤以降この作品は指南書的な役割を果たすかもしれない。読んでいて「やっぱそうだよなぁ」と思えることも多々(わかっていても実践できないのが問題なんだけどね)。だが、そこに大きな希望を抱かせてくれるのは、作者が女性であるということ!女性が描く、男性の恋愛コンプレックス話なので、「あ、やっぱ女性もこう思ってるんだ!」って感じるのは、もうこれ以上とない援護射撃だ。
女性のタイプも1通りでなく、様々なので、自分に近い状況も見つけやすい。別にに自分が草食系男子じゃなくとも、どのキャラでもいいから感情移入できてしまえば、この作品は「面白い」という枠組みを超えた価値をもつはず。
従来の恋愛漫画とは違う、現代的な作品。
あなたにとって、このお話は「現実的」なお話ですか?それとも「現実」なお話でしたか?
(2010年8月追記、全巻読了)
締め方は、後書きで言っている通り、フジの成長譚として十分だったと思う。結局この話は恋愛物語ではなく、フジの自信のなさやモテないというレッテルが根拠のない妄想であったことを気付かせる話だったのだ。
作者は、世の草食系男子達に警鐘を鳴らしているのかもしれない。
「モテ期は向こうからやって来るものではなく、自分で行動を起こして手にするもの。
自信を持てない自分に嘆き、草食系なんて枠組みに甘えて、時間があなたに出会いをプレゼントしてくれると思ってるの?
さあ、行動するんだ!!
周りの人間に頼ったっていい、フジでさえ動き出したんだ、乗り遅れるな!!」
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2010-03-30 15:46:34] [修正:2010-08-05 22:27:41] [このレビューのURL]
5点 ぶるーなっつさん
正直、久保ミツロウさんの描く漫画は、評価はするが苦手、むしろ嫌いなタイプの作品だった。
やはり男性名の女性作家という事もあり、結局描きたいのは女性視点の漫画じゃないのか?要は女性の望む男性像を描いてるに過ぎないのではないか?という疑問が湧くからだ。
しかし、この「モテキ」という作品は、一番「素の久保ミツロウ」像が見える作品ではないかと思う。「非モテ」ならば男女問わず主人公の藤本のような経験があると思う。
「面白い」とまでは思わなかったが、久保ミツロウさんの描きたいものは葛藤して悶々としているコンプレックスを抱えた人間や、自虐に向かう人の姿ではないかと思う。
この人は今まで「あとがき」を書かない(私の記憶では)作家さんだったと思うので、それが逆に「女性作家という事がわからないようにしているんだな」と思えて不満だったが、この作品ではあとがきでも生々しい姿をさらけ出してくれていて、大変好感が持てた。
私にとっては、今まで久保ミツロウさんに持っていたモヤモヤ、不満観を払拭してくれた作品だった。主人公が最後誰ともくっつかないのも、作者が主人公に対してあえて「情けない非モテ」である事に固執したからだと思う。雑誌によっては誰かとくっつくラストを強要する編集者もいたのではないだろうか?(実際、レビューのほとんどがラストが不満だったという感想が多いし)
個人的には、この後の久保ミツロウさんのこの作品のように「素の見える」新たな新作に期待したい。(次回作、どうなるんだろう??)
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2010-07-31 19:07:04] [修正:2010-07-31 19:14:58] [このレビューのURL]
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