あらすじ 駆け出しの漫画家・野津は、自分の描く漫画に行き詰まりを感じていた。そして、締切が迫っているにも関わらず、学生時代の友人たち(全員フリーター)とついつい夜遊びしてしまう始末。そんなある日、野津は、彼女のさよちゃんと一緒に“ひかりのまち”と呼ばれる新興住宅地へ取材に訪れるが…。ゲーム感覚で自殺幇助をする少年が、本当の人の死に触れる「バスストップ」。ひとりの女子高生が不思議な感覚を持つクラスメートと過ごした、ある放課後を描く「hPa」。人生に無気力な青年と執拗に金に固執する青年、そして彼らと同居する5才の少女にスポットライトを当てた「HOME」など、“ひかりのまち”に関わる人々の日常をリアルに描いた連作短編集。
この漫画のレビュー
10点 くっしいさん
この人の漫画は映画のようです。だから映画にすることは難しいだろうと思います。アニメ化なら出来るかも知れませんが、多分陳腐なものになってしまうだろうなあと思います。
漫画以外の媒体に置き換えることでこの漫画が持っている何らかの力が失われてしまうでしょう。つまりこの人の漫画もまた漫画として完成している漫画なのだと思います。
この人の絵からは明るさを感じます。ところがそこで繰り広げられる物語は陰惨さを含んでいます。そして乾いています。陰惨な中で登場人物は嘆かないのです。あるがままを受け入れているというか、或いは無気力と言っても良いかも知れません。
大上段に構えるようですが、この人の物語りは60年代イデオロギーの一角とされた高橋和巳に通ずるものがあるのではないでしょうか。文学がかつてのような力を失った今、同じような力を潜在させているものは恐らく漫画です。ただ漫画には文学ほど煽動する力はありません。絵は印象は言葉より能弁に語りますが、言葉ほどに思想を語ることは出来ないからです。そうしたものが時代を表す媒体になっていることが現代を象徴しているのかも知れません。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2009-10-25 23:51:17] [修正:2009-10-25 23:51:17]