あらすじ
「ぼくのすんでいるところは 山と海しかないしずかな町で―はしに行くとどんどん貧乏になる。そのいちばんはしっこが ぼくの家だ―」。
腹違いの兄、一太。突然現れた、美しくてやさしい年の離れた姉、神子(かのこ)。そして「ぼく」、二太。
クスリを売る。体を売る。金を貸す。とりたてる。この町の多くの大人たちは、そんなふうにして生きている。
神子ねえちゃんは言う。「泣いたらハラがふくれるかあ。泣いてるヒマがあったら、笑ええ!!」。ヤク中の父を亡くしたばかりの少女は、うまく泣くことさえできずに、不思議そうにこう言う。「息するたびにな、ノドの奥に小石みたいのがたまるんよ。食い物の味わからへん」。むき出しの現実を見ながら、幼い心にいくつもの決意を刻んで「ぼく」は成長していく。
この漫画のレビュー
9点 booさん
大人の絵本。
別に悪い意味で言っているのではなく、それだけの叙情性を持った作品であるということ。子どもの頃に読んだ良質な物語と同様、心の奥にうったえかけられるものがこの漫画にはある。
最初読んだときは何がおもしろいのか分からなかった、でももう一回読みたくなった。やはりおもしろさは分からないのだけれど、何度も何度も忘れた頃にまた読みたくなった。
劣悪な環境の中でもなんとか笑って生きようとする彼らの生き様や悲哀といったものが私の心の中にできたしこりのように私の中に残ったのかもしれない。棘みたいに深く刺さって。
絵は下手だし、全体を通してこれだ!と推せるようなエピソードがあるわけでもない。でも何か深い所から私達の心を動かせるような力を持つ奇跡的な作品。
そもそも漫画と言っていいのか分からないので8点にしとこうと思ったのだが、それだけ心に残った作品ということで9点で。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2011-07-14 10:51:16] [修正:2011-07-14 11:05:09]