累のレビュー
7点 クランベリーさん
不思議な口紅を塗って相手とキスすればその人と顔が入れ替わる。
主人公が自らの容姿から抱く激しい劣等感と、そこからくる「醜い自分を捨てて美しい誰かに成り代わる」という異常なまでの執念。実際に他人の顔と人生を盗み取ることで葛藤に苛まれるギャップ。
その辺りの描写がとにかく生々しく、ギラギラとした危うさが作品全体から強烈に伝わってきて、読んでいて強く引き付けられます。
天才女優と謳われた母親から受け継いだ演技力をその執念により昇華させ、その天才的な演技力が単に舞台女優というだけでなく他人の人生を演じることにも繋がっていたりして、描き方が本当に上手い。
「顔が入れ替わる」という古典的で使い古されたネタをベースにしたお話なんだけど、じゃあ現実的に相手の顔を奪い取ったら上手く事が運ぶかというととてもそんなはずはなく、そんな突拍子もないお話にどうやってリアリティを肉付けしていくか。これは本当によくできてるなーと思います。
でも最近はお話の方向性が変わってきました。
奪った顔のおかげでようやく光り輝く舞台に辿り着けた主人公と、そんな主人公の嘘を暴くべく暗躍するもう一人の主人公とも呼べる人物。
なんか妙にサスペンスじみてきてこういう展開も嫌いじゃないけど、当初の頃の主人公のなりふり構わない強烈な執念に引き込まれた身としては、もっと主人公の成り上がり(と転落?)を見てみたいなというのが正直なところ。
ただやっぱりこのお話がどういう風に終わりを迎えるのか、それは見逃せない!
<追記>
口紅って消耗品ですよね。母親の形見の口紅は一本しか無いみたいだけど、毎日使ってたらすぐ使い切っちゃうはず。口紅が無くなったらこの漫画はどうなっちゃうんでしょうね。
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[投稿:2015-05-21 01:09:05] [修正:2015-05-29 23:50:28] [このレビューのURL]
7点 霧立さん
女の美醜というありふれながらも扱いの難しいテーマに正面から切り込まんとする作品。
主人公は絶望的な醜い容姿でありながらも演劇に魅せられ女優を目指す。母から託されたあるものを使って…
醜女であるが故に、自分ではない誰かになりたいという強烈な欲求が芽生え、それを具現化する手段として演劇の才能を極限まで磨き上げる主人公。そして「誰かになる」という形容が比喩に留まらない禁忌的行為…主人公の執念と、自らの醜さ(外見だけとは限らない)と罪深さに対する葛藤・絶望は非常によく表現されて引きつけるものがある。
物語としてはこれからが佳境のようなので、当初のこのテンションをそのまま維持できるか、きちんと風呂敷を畳めるかなどまだ未確定要素はあるし、今やタレント芸人アイドルが跋扈する演劇の世界に「舞台女優」として名を成すことの違和感(やや古臭さ)もある。それでもここまでの展開は十分読ませるので期待値を込めてこの評価を。
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[投稿:2015-01-08 23:03:00] [修正:2015-01-08 23:03:00] [このレビューのURL]